曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

除夜の鐘と煩悩 []

静岡 成因寺 梶川敬之 師 

早いもので、今年も残すところ、1か月を切りました。大晦日には、各地のお寺で、除夜の鐘の音が響き渡ります。除夜の鐘を打つ回数は、108回とされていますが、この108回という回数は、煩悩の数です。除夜の鐘には、鐘を突くことで、煩悩を打ち消して、新しい年を迎えましょうという意味があります。
 この煩悩ですが、自分の内面にあって、自分自身を苦しめる心のことを言います。108個ある煩悩の中で、最も人を苦しめる煩悩が、「三毒の煩悩」とも言われる、3つの煩悩です。まず1つ目の煩悩は、貪欲(とんよく)です。貪欲とは底無しの欲のことを言います。必要以上に、追い求める心です。2つ目の煩悩が、瞋恚(しんい)です。瞋恚とは、怒りや憎しみのことです。欲が満たされないことは、怒りや憎しみに繋がります。怒りを増幅し、爆発させることで、人間関係を壊してしまうこともあります。3つ目の煩悩が、愚痴(ぐち)です。愚痴とは、人を羨ましいと思ったり、人を妬んだりすることを言います。
 曹洞宗では、葬儀等の際に、懺悔文(さんげもん)をお唱えいたします。懺悔文の前半部分には、「我昔所造諸悪業 皆由無始貪瞋痴」とあります。私が過去に行った過ちは、すべて始めもわからない貪瞋痴によるものとされているのです。この貪瞋痴こそが、先程述べました、3つの煩悩です。3つの煩悩が、過ちの原因なのです。
 皆様お1人お1人にとっての、3つの煩悩とは、具体的には、何でしょうか?。除夜の鐘の季節にあたり、1つずつ、思い当たることを考えてみましょう。すべての煩悩を完全に打ち消すことは、大変難しいことです。しかし、煩悩に振り回されるばかりの生活を送っていたのでは、苦しみや悩みを抱え、過ちを犯し続けることになってしまいます。まずは、少しでも煩悩を抑え、コントロールすることに努めてみましょう。そうすることによって、日常の生活は、以前よりも心地の良いものへと変わって行くでしょう。
 皆様のお近くでも、除夜の鐘を実施しているお寺があるかと、思います。寒い真夜中の行事ではありますが、除夜の鐘に参加し、自分自身の煩悩と向き合い、今年1年の行いを反省し、新しい年を迎えるのは、いかがでしょうか?。

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