曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

除夜の鐘 []

愛知 普蔵寺 川浦詳元 師

今年も残すところあと一ヶ月となり新年を迎えますが、皆さんは毎年どのように年末年始をお過ごしになるでしょうか。家族そろってテレビ番組を見て過ごす方、神社仏閣に初詣に出かける方、また旅行をして過ごす方、皆さんのご家庭で様々な過ごし方があることかと思います。年の瀬の行事の一つに除夜の鐘があります。曹洞宗の大本山の永平寺でも大晦日の日に修行僧によって一〇八声の鐘を鳴らします。一〇八声の鐘を鳴らす起源は諸説ございますが、一〇八という数字は人の煩悩の数と言われていて、その数鐘を鳴らすことで煩悩を祓うと言われています。年の瀬に一〇八の煩悩を祓い、新しい年をよりよい年になるように願いを込めて行う行事です。
 しかし、私たちは誰もが様々な欲を持って生きています。「もっと豊かな生活がしたい・おいしい物が食べたい・新しい服がほしい」私たちは、日々欲望に駆られますが、欲というのは時に人が生きていくための目的、活力になります。この私たちの社会も、過去を生きた方々の生活の向上や社会を発展させたいという欲からできたものと言えます。その欲が強くなったり、独りよがりになると貪りの心が目覚め、貪欲になり煩悩となります。
では、私たちはどのように欲と向き合えばよいのでしょうか。私たちに求められるのは、自らの欲を抑制、コントロールしていくところにあります。今自分が送っている日常を振り返り、あたりまえの日常をありがたいと思うこと、そしてそのあたりまえも永遠に続くことのない儚いものであると気づくことです。朝日を浴びて布団の上で目覚めた時、忙しい時間に追われながらいただく食事、家に帰って「おかえり」の声がした時、一日の終わりに布団の上で眠りにつく時、そんな何気ない日常を何倍も豊かに感じることができるのでないでしょうか。
コロナウィルスの蔓延により私たちの生活は大きな変化をしましたが、この一年で元の生活に戻りつつあります。この年末、除夜の鐘を聞いて、今年あったことを思い出してください。思い出の中に気づくことのできなかった幸せを見つけることができるかもしれません。

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