曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

明珠掌に在り []

岐阜 龍泰寺 宮本覚道 師

ここ最近、自己肯定感についての話題が多く聞こえてきます。自己肯定感とは、「ありのままの自分を肯定する感覚」のことです。他人と比較することなく、自分自身が「今の自分」を認め尊重することで生まれる感覚であり、前向きに生きるための原動力となります。昨今においては、自己肯定感が低い若者が多いと言われております。あるアンケートによると「自分自身に満足している」と言える若者は四十五パーセントしかおらず、若者の半分以上が自分自身に満足していない状況です。
では、自己肯定感を高めて、自分自身に満足するには、どうすればよいのでしょうか。
実は、その方法を教えてくれている禅の言葉があります。
それは、「明珠掌に在り」という言葉です。「大切なものは既に手の中にある」という意味です。ここでいう大切なものとは仏性のことです。仏性とは、自分の中に住んでいる仏様の心のことです。
私たちの中には既に仏様が住んでいます。この仏様の心とは、「ありがとう」と思ったら「ありがとう」と伝える。「ごめんなさい」と思ったら「ごめんなさい」と伝える。この素直で正直な心が仏様の心です。私たち人間は成長するにつれて、人の目が気になったり、周りからの評価が気になったりしてきて、本来の自分を表現できなくなることもあるのではないでしょうか。しかし、これでは自分の中の仏様を活かすことはできません。
では、そうすればいいのでしょうか。それは、「人にどう思われるか、ではなく、自分がどうありたいか。」「できるかできないか、ではなく、自分がどうしたいか。」この素直で正直な心を大切にすればいいのです。この仏様の心を信じて生きていくことによって、「自分の人生の主人公は自分である」という自覚が芽生えます。この自覚によって、「自分の人生を自分らしく生きている」という実感が出てきます。そんな自分の生き方を称えることができたときに、自己肯定感が高まり、自分自身に満足できるようになるのです。
自分には何もないと悲観することなく、他人をうらやむことなく、自分の中の仏様を活かすために、ただひたすらに目の前のことに一生懸命に取り組んでいく。その心がけが大切なのです。
是非、この心がけを大切にして、自分の中の仏様の心を信じて、自分らしく自分の人生を歩んで参りましょう。

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