曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)
たのしみ法話
たのしみ法話

淡い仏 []

三重 四天王寺 倉島隆行 師 

 ウチのお寺では毎年10月8日に「入れ歯供養祭」が開催されます。お家にある大切な方の入れ歯が中々捨てられず、困っていらっしゃる方の為に地元の保険医協会の方が主催して入れ歯を集め、10月8日の語呂合わせで「入れ歯の日」と定めて供養し、溶かした入れ歯から希少金属を取り出します。その収益の一部から地元の小学校や保育園に本を寄贈する、正に循環型の取り組みです。最初に本堂の須弥壇前に数百もの入れ歯が置かれている情景を見たときには驚きましたが、毎年やっていると流石に慣れてきました。
法要の後、参加者の方へ法話をするのですが、曹洞宗開祖道元禅師と歯磨きの習慣は切っても切れません。「鎌倉時代に日本に歯磨きを伝えたのは道元禅師」と説明しておりましたが、よくよく調べてみると平安時代から既に歯磨きはあったそうです。では、何故道元禅師が歯磨きを伝えたと申しますと、正しい口腔ケアの第一人者であるからです。細かな作法を書物に残し、間違った歯磨きをしない様に実に丁寧に解説されています。特に舌につく汚れ「舌苔(ぜったい)」の取り方は、悪臭の素であるが取りすぎて血が出ない様にとまで注意されています。鎌倉時代には現代の様な衛生管理は当然ながらありません。ウイルスによる病気、また虫歯ですら命を脅かす時代において道元禅師が説かれた身体を整え、環境を清潔に保つ修行は現代にも通じるものがあります。私も道元禅師の教えに習って口腔ケアに取り組んでいます。するとどうでしょう、食事が一層美味しく感じられるのです。今までは味の濃いものを好んでおりましたが、舌が敏感になると素材の僅かな味も感じるようになりました。道元禅師が料理について説かれた典座教訓にある六つの味わい〈辛、酸、甘、苦、塩〉の六味にある「淡」い味わい。これを味わうには食事をいただく側の心構えが必要になります。素材本来の美味しさや、作り手の真心は微かな味わいで意識しないと感じ取れません。その為にも心身を整えて、正しく食事に向かう必要があるからです。曹洞宗が食事だけでは無く生活習慣までも徹底して仏の行をする理由は、森羅万象に宿る淡い仏の存在を感じ取る為であると考えます。
コロナ禍において静かに食べる黙食が注目されました。どうぞ、いただく側の口腔ケアも大切に淡い仏の味わいも感じてみてください。

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