曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

春の教え []

静岡 広台寺 高橋泰仙 師 

 昨今は新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、日本及び世界の人々を脅かしております。
振り返ればマスク、消毒液の買い占め転売などの、浅ましい人間の欲が見え。また自分や家族を心配するあまりに、コロナウイルス感染症の罹患者やその家族への誹謗中傷、濃厚接触者への疑心暗鬼などの、身体ではなく心が病気になってしまっている方々も多くなってきてしまっているようにお見受け致します。
ぜひ皆様には、もし近くに病気にかかった人がいるならば、近寄りたくない、伝染りたくない、何で感染してきたんだ、などと思うより先にまず相手のことを思い、お辛いでしょうに、大変でしょうに、と心配するをする。そのような心を持って真に平穏な日々の生活を送っていただきたいと願っております。
さて、そのような時世の中でも季節は正しく巡ってまいります。今年も、春の暖かい陽の光が差してまいりました。
「春色高下無く、花枝自ずから短長」という言葉がございます。春の陽射しは山や谷、野や町の区別なく、全てに暖かく分け隔てなく降り注ぎ、その日の光の下で桜や梅などの様々な木々が色々な枝に花をつけるという言葉であります。
春、人里離れた細い枝に咲いた梅の花は、街中の立派に咲く桜になりたいなどとは思いません。梅は梅のまま咲き、人の目につこうともつかずとも、讃えられても讃えられなくても、不平も不満も言わず時期がくればただ黙って散っていく。もちろん桜も桜として散っていく。こうして色々な花々が自分自身の本分を努め、春という季節を彩っていく。
人の世の中にも色々な差があります、生まれたところや、皮膚や目の色、性別、背の高い人と低い人、中には変えることの出来ない、ありのままの差があることでしょう。しかし、その数多の命が自分で自分を認め、お互いがお互いを認め、もちろんこの世の命としては分け隔てなく平等なのですが、その平等とは別に我々は各々が仏であり、絶対であることを知り、その分に応じて個性を輝かせ、さまざまな命で社会を彩っていく。その上で皆で和を大切に生きていく、ということが大事なのです。それが、大自然から学ぶ命の使い方であります。
みなさまも、この春という季節の教えを、どうぞ実践され。この大変な時世を和を以て乗り越えていただきたいと思います。

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