曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)
たのしみ法話
たのしみ法話

深く耕す努力 []

静岡 良富院 住職 水野有高 老師

 石川素堂禅師は曹洞宗の大本山總持寺を石川県から神奈川鶴見へ移転した方でありますが、禅師がまだ石川県の寺に住職をしていた時、檀家の老婆が訪ねて、「うちの息子は父親のないことをいいことにして、先祖伝来の田畑を売り払って遊んだ借金を返そうとしております。なんとかうまくいいきかせてもらえませんか」と頼みました。
禅師は息子を呼びつけて「お前が売ろうとしているあの畑は、先祖からの宝物が埋められていると聞いておるが、それと知らずに安い値段でうるなんて馬鹿げたことと思わないか。やめておくがよい」と、戒めました。欲の深い息子は、さっそく売る事を一時延期して、その翌日から、畑に出て隅から隅までせっせと掘り返して見ました。
だが宝物は出て来ません。「あの和尚め、俺をだましやがったな」と、寺へどなりこんできました。禅師はだまって息子の言葉を聞いておりましたが、言葉が終わるなり大声で叱りつけました。「この馬鹿者目が!掘り返した所に麦の種をまいてみろ、わしの言うことが偽りでないことがわかるわ」。禅師の眼光の威厳と恐ろしさにハッと心を打たれた息子は黙って頭を下げると、急いで家に帰り、生まれ変わったように精を出して麦をまきました。欲の為とはいえ畑はよく耕されていましたので、明くる年に、息子の家の麦は見事な実りを見せ、以来家業に励みましたので傾いていた家をたて直すことができたという話を聞いたことがあります。
 最近、努力をさけて、安易によい結果だけを得ようとする風潮が強くなって来ました。やはり、深く耕す努力がないといけないと思います。

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