曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

出会いの春 []

岐阜 全昌寺 不破英明 師 

暖かな季節となりました。四月にはお釈迦さまがお生まれになられた日を記念し降誕会という法要が行われます。
お釈迦さまご生誕の逸話として、お生まれの後すぐに七歩歩かれ「天上天下唯我独尊」と話されたことがよく知られています。この天地に唯一の存在である私は何とも尊いとおっしゃられたのですが、しかし、これは他の人々と比較して自分だけが優れているということではありません。お釈迦さまは、自分だけではなく一人一人それぞれのかけがえのないいのちの尊さについてもお示しになっているのです。
春になりこの御教えに触れる度に思い出すことがあります。大学受験の頃のことですが当時受験生の私はいつも自分を中心に考え、「私自身」と「私以外の受験生」という見方しか出来ず、勝つか負けるかしかないのだと思っていました。しかしその後あることに気付きます。「私以外の受験生」というのも、皆私と同じように受験の不安の中、自分自身を信じ歩み続けた一人の人間であり、同じように喜んだり悲しんだりする日々を過ごしていたのです。また当たり前のことですが自分一人で受験をすることは出来ません。その方達がいたからこそ私も切磋琢磨し受験に挑むことが出来たのだと気付き、深い感謝の気持ちと敬意を持つに至ったのです。
この春、人との新しい出会いや新しい環境に身を置くことで不安を感じる方もいらっしゃるかと思います。その時はお釈迦さまのお言葉を思い出してください。“この世に私のいのちほど尊くかけがえのないものはない”この御教えに従って私たちに為しうることはまず自分自身の存在の大切さに気付き、結果他の人々をも自分と同じように尊重し愛することではないでしょうか。

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