「人は二度死ぬ。一度目は肉体の死。二度目は誰からも忘れ去られたとき。」
この言葉は二〇一六年に亡くなられたタレントの永六輔さんが生前に仰られていた言葉です。
私共はお檀家さんたちから、一周忌や三回忌などの年回供養の申し込みをいただきますが、十年二十年と経つといつしか「あとどれくらいまで故人のお年忌をすればよいのですか。」と尋ねられることが増えるようになってきます。
もちろんそれぞれのお宅にそれぞれの考え方があるのは理解していますが、それでも私はこのような言葉を伝えるように心がけています。
「私たち曹洞宗では、道元禅師様の七百五十回忌をお勤めいたしました。勿論、今を生きる私たちの誰もが直接お会いしたことなどあろうはずがありません。それでも大遠忌を今でもお勤めするのは、道元禅師様の残された逸話や書物を通してそのお心を今日もはっきりと感じられることができるからなのです。
皆様方が年月を重ねていくごとに大切な方を亡くした悲しみやつらさを忘れていくのは自然なことです。ですが、故人が皆さんと確かに一緒に過ごした日々があったということは忘れないであげてください。お年忌は故人を供養する単なる宗教儀式などではなく、今も残されたご家族の心の中で共に生きているということを改めて感じることのできる大切な機会なのですから。」
人は必ず一度は亡くなります。しかし二度目の死は、残された私たちの思い次第で訪れることをなくすことができるのです。
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