曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

しだれ桜から学んだこと []

静岡 龍源院 副住職 吉川太禅 師

私のお勤めするお寺には、大きなしだれ桜の木が植えてあります。春になると、滝ののように垂れた枝に咲くピンク色の花が多くの花見客の目を楽しませてくれます。樹齢は八十年を超えますが、毎年きれいな花を咲かせるために、樹木のお医者さんの力を借りて、一年中木の保護に努めております。
 この桜との関わりを通して、きれいな花を咲かせるには、何よりも根っこを大切にしなければならないことを学びました。根っこは地面にかくれて見えませんが、根っこの状態が悪くなると、地上の枝もたくさん枯れ、花の数も少なくなってしまうのです。特に根元の土を踏み固めてしまうと、水や酸素を吸えなくなり、根っこは弱ってしまいます。
 ところで、最近よく思うのが、人間も桜と同じではないかということです。人間の場合、心が桜の根っこに相当します。心は目に見えませんが、心という根っこを養わなければ、豊かな人生という花を咲かすことはできません。
 では心を養うにはどうしたらよいかというと、ひとつは仏教の教えを学ぶことです。お釈迦様は、最初の説法のなかで人が生きていくうえでの八つの正しい道を示されました。八つとは、正しく物事を見ること、正しく考えること、正しく語ること、正しく行為すること、それから正しく生活すること、正しく念じること、正しく瞑想することです。
 これらの八つの道を実践していくことにより、人生の苦しみを除いて完全な心の自由を得ることができると、お釈迦様は説きました。この教えは、だれにでもできる人の心を養う道ということもでき、私たちが生きていくうえで、八つについて自分が正しいかどうかを考えてみるのもよいでしょう。
 ただ、すべての道を一度に実践できなくても、自分のできる範囲で実践していけば、心も少しずつ養われ、毎日の生活が充実したものになるのは間違いありません。正しい根っこから生えた花はきれいで長持ちします。しかし、手入れされず根っこの弱い花が、長い間にわたって美しく咲き続けることはないでしょう。人間もよく生きようと思ったならば、まず何よりも根っこに返らなければいけません。どうか心という根っこを深く養い、それぞれの場所で自分の花を咲かせてください。

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