曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

仏道を歩む []

静岡 正泉寺 梅貝泰文 師 

『仏道は人人の脚跟下なり』
これは仏道とは私たちの足元にある。という道元禅師さまのお示しで、私は「日常生活のひとつひとつを丁寧に行う事こそが仏さまの行いなのである。」と理解をしています。
この道元禅師さまのお言葉を思うとき、私には心に浮かぶ出来事があります。それは、あるお盆前の暑い日のことです。その日私はお檀家の池田さんと一緒に草むしりをしていました。草むしりも一段落したこともあり私と池田さんは日陰でお茶休憩をすることにしました。お茶を飲みながら私は池田さんに「今日も暑い中をありがとうございます。隅の方はあまり目立たないので草が少し残っていても大丈夫ですよ。」と言うと、池田さんは「和尚さんお庭が綺麗だとお寺に来て下さる方が気持ちよくお参りできて笑顔になってくれるでしょ。だから目立たない場所もちゃんと綺麗にしなければ駄目ですよ。」と笑顔でおっしゃったのです。
お庭に目をやると、池田さんが草むしりをして下さった場所は草が全く生えていなくとても綺麗でした。それに比べて私が草むしりをしていた場所は、一見すると綺麗に見えるのですがよく見ると所々に草が残っていてとても気持ちがよいものではなかったのです。
 池田さんは草むしりを他の人の笑顔の為に丁寧に行っていたのです。それにくらべて私は、「綺麗に見えていれば良い。そうすれば和尚さんはお庭を綺麗にしてくれていて有り難いな。と思ってもらえるだろう。」という自分の為の行いであり、決して丁寧な草むしりではなかったのです。同じ草むしりでも、私と池田さんには大きな違いがあったのです。
 池田さんが行っていた他の人の為に行う丁寧な草むしりこそが仏道、仏さまの行いだったのです。
 『仏道は人人の脚跟下なり』
 私たちは日頃、自分のことだけを考えて行動してしまうことがありますが、私たちは決して自分一人だけで生きているのではありません。共に生活をする他の人の笑顔の為に、ひとつひとつの行いを丁寧に行うこと、その行いが仏道を歩むことになるのです。

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