曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

言葉という凶器 []

三重 善昌寺 西育範 師 

 「人が生まれたときには、実に口の中には斧が生じている」。
これはスッタニパータという古い経典に出てくるお釈迦様の言葉です。人の言葉は斧のように凶器にもなる、と解釈できます。
 斧はご存じの通り、石器時代から存在する厚くて重い刃をつけた、枝を切り落としたり薪を割ったりする刃物です。また、斧は強力な武器としても使用されてきました。人はこの言葉という斧を生まれつき持っていると、お釈迦様は説いています。
 昔から口は禍の元と言われますが、現代ほど、言葉が猛威を振るい、人を傷つける時代はないのではないでしょうか。それは特にSNS、インターネット掲示板等の中で行われています。
 昨年、フジテレビの複数の男女がシェアハウスする様子を記録したリアリティ番組に出演していた女性が、自身のSNSに書き込まれた誹謗中傷に苦しみ、22歳という若さで自ら命を絶っています。毎日100件近くのコメントが匿名で寄せられていたといいます。「死ね」「気持ち悪い」「消えろ」といった書き込みもあったようで、どんな人でもこのような言葉を投げつけられると、心は傷つき、そして人によっては生きる気力を失ってしまいます。
 これはなにもタレント、有名人、政治家だけでなく学校や職場など、身近な所でも起こっていることで、罵り、陰口、悪口、心無い言葉が飛び交っています。
 言葉は人の心を深く傷つける、時には命をも奪う凶器にもなるものだと肝に銘じなければいけません。まさしく斧のように、使い方を間違えないように、慎重にならなくてはいけません。
続けてお釈迦様はこう言います「愚か者は悪口を言って、その斧によって自分を斬り割くのである」。言葉で人を傷つけると、結果それは自分をも傷つけることになります。人のあら捜しや悪口で満たされるということは無いと思いますし、書き込みでストレスを発散させているつもりでも、逆に心は荒んでいくでしょう。
言葉は正しく使えば、人を優しい気持ちにさせたり、笑顔にさせたりするものです。インターネットの時代だからこそ、優しい言葉、思いやりのある言葉を、私たちは身につけなくてはいけません。

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