曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)
たのしみ法話
たのしみ法話

相手を言い負かす事なく自らの考えを曲げる事なく []

静岡 泰盛寺 正木勝良 師 

私の住んでいるところは、大地震が起きた場合、津波が十メートルを超えてくるそうで、さらに原発が近くにあり、地震への対策が課題となっている地域です。
特に原発の話になると、今は停止していますが、地域が潤うので動かしたほうがよいとか、危ないから停止のままでよいなどの意見があります。どなたもご自身の考えが正しく、次の世代や地域の為になると思いお話をされているのだと思います。
そしてお互いが正しいと思っている考えが、時にぶつかることがあります。
一生懸命自分の考えが正しいと話をしても、時に相手に言い負かされることもあります。でも相手の考えには納得できませんし、悔しく、腹が立って、今度は言い負かしてやりたいと思うだけで、結局相手の考えには賛同していないのです。
逆に相手を言い負かすことができれば、自分自身は満足しても、言い負かされた相手は腹立たしく思うかもしれません。
しばらく時間が過ぎると、何の話で言いあったのか以上に、悔しさや腹立たしさが心に残り、お互いが疎遠になっていく原因となります。
そんなことにならないよう、曹洞宗を開いた道元さまはご自身のお話の中で、自分が道理にかなったことを言っていて、相手が間違ったことを言っても、理屈で攻めて相手を言い負かすのは良くないですよ、と言っておられます。
また、自分では、たしかに自分のほうが道理に合っていると思っても、私が間違っていました、と言って、負けて引き下がるのも、あきらめが早すぎていけませんよ、と言っておられます。
では、どうすればいいのかということになります。
道元さまは、相手を言い負かしてしまうのではなく、自分の考えを間違いにするのでもなく、そのままにしておくのがよいと言っておられます。
相手のお話も、気になることであっても、聞こえないようにして、ふんふん、そうかね、と気にかけないで話をしておくと、相手も同じようにしばらくすれば話の内容も忘れてしまい、怒りのもとになることはありませんよ、と言っておられます。
人と意見をぶつけ過ぎない、けれども道理を曲げないことが、何より大切な心得ですよ、ということです。
私達は、一人で生きているのではありません。周りの方々とともに生かし生かされているのです。
皆様が、周りの方々とともによりよい日々を送られますよう願っております。

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