曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

放下著 []

岐阜 洞禅寺 住職 紀藤祐元 老師

私たちは日々を生きていくなかで、その経験を通じて実に多くの「思い」を抱き、またその「思い」と共に人生を歩んでいきます。皆さんはご自分の中にあるたくさんの「思い」とどう付き合い、日々を過ごしていますか。 
様々な思いの中でも、特に辛い、悲しい、悔しいといった思いは、「忘れてしまいたい」という思いに反して頭の中に留まり続け、思い悩むあまり現在の生活に支障をきたすということも珍しくないのではないでしょうか。私自身、そういった思いをいつまでも捨てきれず、何も手につかないという時期がありました。
突然ですが、「梅干しのことを考えてはいけません」このように言われた場合、皆さんの頭の中ではどのようなことが起こりましたか。不思議と、先ほどよりも「梅干し」のこととを余計に意識してしまったのではないでしょうか。このように、「考えないように」することは「考えるように」することと、実は大して変わりないのかもしれません。
禅の言葉に「放下著(ほうげじゃく)」という言葉があります。何ものにも執着を持たず、一切をさっぱりと放り投げてしまいなさい、捨ててしまいなさい、という意味の言葉です。この言葉は、「執着を全て捨ててしまいたい」という思いすらも捨ててしまわなければ、真に捨てきったことにはならない、ということを示しています。
 「忘れてしまいたい」という思いを手放すことは、なかなか容易ではありません。ですが反対に「思うようにする」ことは、いくらか容易にできるのではないでしょうか。もしも現在、不安や悩みを抱えている方がいらっしゃいましたら、積極的に忘れようとするのではなく、どんなことでも結構ですので、是非違うことに意識的に思いを巡らしてみてはいかがでしょうか。すぐには難しいかもしれませんが、やがて「忘れてしまいたい」という思いそのものから離れ、不安や悩みと思えていた事柄が、あなたをまた違った角度から照らしてくれるかもしれません。

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