曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

死を生かす []

三重 永昌寺 住職 永谷達哉 老師

「お前の死を無駄にはしない・・・」
映画などの1シーンによくあるこのセリフ。たいていの場合、主人公が無念の死を遂げた仲間に命を助けられ、敵を取る決意をする時に使われますが、今日はまた違った意味の「死を無駄にしない」という事についてお話したいと思います。
人間は誰しも、自分の命に限りがあるという事を知っています。しかしながら普段の生活ではあまりそれを意識してはいないものです。人生においてそれを強烈に感じることが出来る瞬間。それは多くの場合、親しい人の死と対峙した時ではないでしょうか。
私は二十三歳で母を亡くしました。母の死を目の当たりにして私が強く感じたこと。それは、いずれ自分にも死が訪れるのだという事でした。その時私はまだお坊さんではありませんでしたが、母の死は私を大きく変えました。母の死と正面から向き合い、生きるとは何か、死とは何か、自分なりに必死に考えて得たもの、それは今生きているということの有難さ、家族や友人と過ごす時間の尊さ、人の為に何かをすることの大切さ、何事も一生懸命やれば楽しいのだという事。私にこれらを気付かせてくれたのは間違いなく母の死であり、結果として「母の死」は私の心を豊かにしてくれました。
当たり前のことですが、全ての命には死という終わりがあり、死は悲しいものです。大切な人を失った悲しみは深く、時間が解決してくれるというほど単純なものではありません。しかし悲しい時ほど人は優しくなることが出来、大切なことに気が付くことが出来るものです。
大切な人が身をもって教えてくれたこと。そこから何かを学び、生かし、自分の人生を幸せに生きていく。これこそが「死を無駄にしない」という事であり、最も尊い供養の形なのではないかと私は思います。

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