曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

自利利他・自障障他 []

愛知 花谷院 愛知秀輝 師 

仏教用語で「自障障他」という言葉があります。「自障」とは自分が傷つくこと、「障他」とは、他人を傷つけること。
現代社会では、勝ち組、負け組といって、相手を見下したり、他人を差別したり、ハブにしたり、いじめたり…そういうことがよくおこっています。他人を傷つけ、他人を蹴落とそうとする、つまり「障他」ということは、相手を傷つけるだけでなく、自分という人間の価値を下げ、ひいては自分自身をも傷つけています。それが、「自障障他」という言葉です。
その対になる言葉が、「自利利他」。仏教では、この生き方を大切にしています。
「自利」というのは、自分が幸せになること。「利他」というのは、他の人にも幸せになってもらうこと。
自分の幸せが、他の人の幸せにつながり、他の人の幸せが自分の幸せにつながることで、世界全体が幸せになっていく、という考えです。これは、とてもすばらしい考えだなと思います。ですが実現するとなると、これがなかなかに難しいものです。
自分が幸せになることばかりに集中して、自分が自分がと「自我」を前面に押し出していくと、他の人の幸せはどうでしょうか?
きっと自分の利益ばかりに躍起になって、他の人を蹴落とそう、そういうギスギスした「障他」の世の中になってしまいます。
そうではなくて、自分と同じくらい相手のことを思いやり、考え、相手のために、一緒に幸せになっていく。そして、そのためにはどうしたらいいか、ということを常に考え、言葉をかけてあげたり、行動したりするようにしたいです。
そうは言っても、世界全体を平和にし、幸せにするというのは、人類が長い年月をかけても、いまだにできていないことです。戦争であったり、貧困問題であったり、差別であったり、なかなか解決できていないことばかりですけれども、みなさんが一人一人、自分と近しい人、家族だったり、友人だったり、もしくは街で困っている人を見かけたとき。そういったとき、まずは、自分の近しい人から、自分が幸せになるのと同じように、相手にも幸せになってもらえるよう、考え、思いやって、言葉を選んでかけてあげたり、考えて行動してあげてほしいなあと思います。
そうすれば、いじめや差別、そういったものはなくなっていき、少しずつですが、良い世の中になっていくんではないかなあと思います。

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