曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)
たのしみ法話
たのしみ法話

月の向う側 []

三重 見福寺 住職 河村龍樹 老師

近年世界では、人の往来が増えグローバルな社会となっており、その結果人種・民族・宗教等の争いや差別も広範囲かつ規模の大きなものになりつつあります。つい先日も車が群衆に突っ込み130人以上が死傷するなどしたテロ事件があり、またある人種至上主義者と反対派の大規模な衝突もあったばかりです。このようなニュースを聞くたび私たちは、どうにか解決する道はないのかと考えます。人類の長い歴史の一端を見ると、それは争いの歴史でもあり、解消できない問題の様にも思われます。
このような時に、仏教の「四摂法」という菩薩が人々を導く4つの実践徳目である『布施・愛語・利行・同事』のおしえが頭に浮かびます。この4番目の「事を同じくする」同事について道元禅師は(『正法眼蔵』 四摂法)の中でこうおっしゃりました。「同事というは、不違なり 自にも不違なり、他にも不違なり」と。簡単に説明すると『他人とじぶんは同じで違わない』他の人の立場で考え思いやるということです。
ただ、この同事の実践は簡単ではなく、たとえば、月の裏側は地球からは見えない様に、同じボールでも見る角度で全く他の面を見ている様に、立場が違えば一つの物事に対しての感じ方も180度違う場合も多くあり、怪我の痛みに耐えている人を見てもその痛みは想像することしか出来ず、相手の立場で考え、思いやることがいかに難しいことか。
しかしながら、「仏道をならふといふは、自己をならふなり。自己をならふというは、自己をわするるなり。」と道元禅師はまた、お示しになっております。同事の教えを頭において日々精進することにより自己を忘れた時に、他の人の痛みや苦しみが本当にわかるのかもしれません。

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