曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

なんのために生まれて、なにをして生きるのか []

岐阜 洞禅院 紀藤祐元 師 

これは、やなせたかしさん作詞のテレビアニメ『それいけ!アンパンマン』の主題歌である「アンパンマンのマーチ」に登場する一節です。子ども向けの歌のように思われますが、実はそこには大人にとっても深い問いかけが込められています。
ここで少し、「なんのために生まれてきたか」について考えてみましょう。皆さんはお母さんのお腹の中にいるときに、「よし、自分はこういうことをするために生まれてくるぞ!」そう決めてから生まれてきた覚えはありますか? おそらく誰もがそうではなく、「気がついたら生まれてきていた」そう感じているのではないでしょうか。
では、あなたが生まれてくるまでの間、ご家族やご親族はどうだったでしょうか。きっと「無事に元気で生まれてきてほしい」「幸せに生きてほしい」などなど、たくさんの願いや祈りを捧げてくださったことでしょう。それだけではありません。お母さんが健やかであること、十分な栄養をとれること、その栄養を支える天地の恵みがあること……。そうした条件がすべて揃って、ようやく私たちはこの世に生まれてくることができました。そう考えると、「何のために生まれてきたか」は分からなくとも、「どのように生まれてきたか」については少し見えてくるのではないでしょうか。
道元禅師様は「仏道をならふといふは、自己をならふなり」と示されています。仏さまの道を歩むとは、自分自身とは何かを問い続けることに他なりません。その答えを頭で考えて探すのではなく、坐禅に身を委ね、天地や人々と共にある命に気づいていくことが大切だと説かれました。
私たちが「どのように生まれてきたか」を見つめるとき、それを受けて続く「何をして生きるのか」という問いは、今までとは違った響きを持って迫ってきます。生きる意味や目的を先に求めるのではなく、今ここにある関わりを大切に、丁寧に生きること。そこにこそ、生きる意味が自然に立ち現れてくるのではないでしょうか。

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