曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

にじみ出る感謝の設計図 []

三重 善光寺 牧野正人 師 

今から四千年以上前の中国のお話です。車造りの第一人者といわれた奚(けい)仲(ちゅう)という方がいました。奚仲の車作りは中国の伝統文化を構成する大きな革命であったと言われています。なぜなら道路の整備もない時代に牛馬が牽(ひ)く車の登場により、重い荷物の長距離輸送が可能となり、道路の開発や貿易の整備が一気に加速されたからです。奚仲は国の発展をもたらして一躍英雄となったわけでした。
ここでめでたし、めでたしとなるわけですが、なんと奚仲は百車輌以上を手がけた完成車を惜しむことなくバラバラにしてしまいます。とうとう全ての車輪も車軸も外してしまいました。もはや車と呼べるものは目の前にはありません。どうして奚仲は執らわれることなく車をバラバラにしたのでありましょうか。
見方を変えれば、私たちはそれぞれに役割があります。役割を果たすということは他者を思い受け入れることで、濁りのないしっかりとした車輪や車軸のような働きをするのです。おそらく奚仲はいつの間にか自然に他者を思い受け入れていたのでしょう。そして車を作るというよりは自分の中で考えていたものが具現化されて車になったというほうが正解であると思います。
奚仲は車を自身の手でバラバラにしましたが、その思いは心の中にしっかりと設計図のように残っていたと思います。だから奚仲はしっかりとした車軸や両輪を造れたのでしょう。
さて、皆さんはいかがでしょうか。お世話になった家族や知人の方々の顔が思い浮かびませんか。その感謝の思いが心からにじみ出て設計図が出来ているのです。あるいは人によっては設計図が作られているところかもしれませんね。

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