曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

思いやりの一言 []

静岡 長命寺 加藤高敏 師 

仏教には、「愛語」という言葉があります。これは相手に思いやりの言葉を掛けるということです。
皆さんは、人から何か相談されたり、人が悲しんだりしている時、どのような言葉を掛けるでしょうか?「相手を元気づける言葉を掛けなくては」「何か気の利いた事を言ってあげなければ」と考える事もあるかと思います。私もお葬儀に行った際、悲しんでいるご遺族に対して、何か慰められる言葉を掛けなくてはと考えてしまいます。
私は先日ある高齢女性からこのような話を聴きました。その女性は、若くして両親を亡くし、学校には行かず働きに出て、その先で知り合った方と結婚しましたが、その相手も若くして亡くなり、子供もいましたが女性一人では育てることができず、子供と生き別れることとなってしまいました。その後も女性ということで、社会的な差別を沢山受けてきました。「何で私ばかりこんなに辛い思いをするのか?」「いっその事死んでしまいたい。」そう思ったことも何度もあったそうです。
その女性も年を取り、施設へ入所することになりました。その施設で出会った同じ入所者の方に、自分のこれまでの人生を話したそうです。その方は女性の話を、「うん、うん」とただ聴いていたそうです。そして最後にその方は一言、「あんた、本当ツラかったね。」と言ったそうです。その時女性は、自分の人生が全て救われた思いがしたそうです。
 思いやりのある言葉というのは、決して相手に対して的確な言葉を掛けるだけではないのです。相手の近くで、相手の話に耳を傾け、相手の思いになって掛けた言葉が相手を救うのです。それはたった一言の言葉でも、相手を救うのです。
 愛語とは、思いやりのある言葉。思いやりのある言葉とは、相手の立場に立った言葉です。人と接する時、相手の立場、相手の思いに立つことを大切にして下さい。

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