曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

和合和睦〜被災地で学んだこと〜 []

三重 安楽寺 和田正道 師 

今年1月1日、新年早々、能登半島地震が発生しました。また、9月には奥能登豪雨により、甚大な被害を受けました。ここに、お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りするとともに、被災されました方々に心よりお見舞い申し上げます。
 私は1月の地震の後、輪島市門前町へ5回、20日間ほど被災地支援へ入らせていただきました。活動としましては、物資運搬から始まり、炊き出し支援、傾聴ボランティア、がれきの撤去など、その時、その時に必要なお手伝いをさせていただきました。
 私はこの活動の中で、たくさんの方と出会い、いろいろな事を見て、色んなお話を聞きました。そこで、この被災された中にも、一仏両祖の教えがとても大切なのだと気づかされました。一切を正しく観察される智慧と、他者との調和は慈悲によって成ると示されたお釈迦さま。「回光返照の退歩を学すべし」歩みを止め、息を調え、二歩も三歩も退いて、自らが行いを仏道に照らし謙虚に顧みよ、とお説きになられた道元禅師さま。そして「必ず和合和睦の思いを生ずべし」和合和睦を乱すのは、何時の世も人間の我利・我欲、すなわち貪りである、と瑩山禅師さまはお説きになられています。
 被災直後、混乱状態の中で避難所へたくさんの方々が集まって来られたそうです。ライフラインが寸断されている状況での避難所は、とても大変であったと想像します。水道すら出ない状況で、食料も最初はパンだけ。しかし食べたら排泄をしなければなりません。水が出ないトイレは最悪の状況になったそうです。そのような中で、皆が協力して、排泄物を片付け雨水を使って使えるようにしたそうです。一歩下がって、正しく見て、和合し、より良い避難所環境を整えていかれた一つの事例だと思います。ほかにも、避難された方の中に数人のリーダーをおいて、避難所の方針を相談して決めていかれたそうです。また、県外の自治体より派遣された職員が、各避難所と市役所の話し合いの中で「これは避難所に必要だ」と独断で決めてきた支援の機材がありました。しかし、それは避難者が自分たちで管理しなくてはならず、高齢の方が多い避難所では管理できず、3日ほどで返してしまいました。自分が良いと思っても、相談して避難者と調和し和合すべきであったのだと感じました。
 私は、この被災地支援を通して、たくさんのことを教えていただきました。自分の為、自分の欲の為ではなく、皆がより良くなるように和合和睦していくことの大切さ。そして、いま生きていることの有難さ。被災され、突然閉ざされた命がたくさんあります。私たちも、他人事ではありません。だからこそ、一日一日を大切に生き、今できることに真剣に向き合ことが、私たちの修行であり、正しい道ではないでしょうか。

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