曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)
たのしみ法話
たのしみ法話

寺院の響き []

愛知 玄猷寺 星野和幸 師 

皆さんは、お寺に参拝の折、読経の声やカネ、木魚などの響きに耳を傾けたことはありますでしょうか?以前、こうした響きを聴くと心が癒されるということを耳にしたことがあります。今回は、こうした響きの由来についてお話しさせて頂きます。
このように心が癒される響きということでは、例えば音楽というものがあります。近年、音楽療法という分野までもありますので、音楽の効能には注目すべきものがあります。実は、先ほどのお寺での響きも、日本の伝統音楽の元祖として紹介されることがあります。心が癒されるというのは、こうしたことに起因しているのかもしれません。
そもそも日本の仏教は、出家者のみならず、大勢の人々を救う乗り物に因んで「大乗仏教」という仏教の流れを汲みますが、その仏教には音楽との密接な関わりがあります。例えば、《法華経》というお経の一節には、お釈迦様が住む世界において、天人たちが楽器を手に「伎楽(ぎがく)」という音楽を奏でているという記述があります。伎楽は、元は音楽付きの劇や舞踊のことですが、経文の中では音楽を意味することがあります。皆さんもお寺の欄間などに楽器を持った天人が彫刻されているのは、見たことがあることと思います。こうした音楽は、日本では雅楽という音楽の中で受け継がれ、現在でも大阪・四天王寺の雅楽には、わずかながらその面影が残されております。いずれにしても、その響きは、当時の人たちが考える悟りの境地に他ならなかったことは想像されます。
私ども禅宗の寺院においては、モノトーンを思わせる読経の響きはさることながら、とりわけ太鼓、木版、雲版などの「時」を知らせる「鳴らし物」の響きが充実しております。不思議にもその場の静寂を引き立てているような響きですが、そこにはその時々の大切さが込められております。
仏教の伝来以来、こうした寺院における様々な響きは、その後の音楽にも影響を与えていきます。例えば、能楽の大成者、世阿弥は曹洞宗に帰依していたということもあり、その幽玄たる音楽には、読経や鳴らし物の響きを思わせる節があります。ちなみに能楽は、歌舞伎など、さらに次世代の音楽にも影響を与えていきます。
こうして見ていきますと、寺院の響きは、人々の癒しとなりながら、日本の音楽文化を育み、日本人の心を豊かにしてきたとさえいえます。皆さんも、また機会がありましたら、お寺の響きに親しんでみてはいかがでしょうか?その響きは、きっと皆さんにとっての悟りの境地、言い換えれば心のよりどころとなってくれるはずです。

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