本年1月1日に発生しました能登半島地震、私の師匠は輪島市門前の大本山總持寺祖院にてお役目を頂いており、同地で被災されました。祖院の建物も大きな損害を受け、他の方々と共に避難所生活を送りました。師匠は高齢もあり、数日後愛知県に戻ってまいりました。そして静養された後、1月下旬に能登に戻ることとなりました。当面必要な食料、水など物資を車に積み、私が運転して能登へ向かいました。
その時の風景は決して忘れることはないでしょう。道路は所々陥没しあるいは隆起し、無数の亀裂が入り、通行止めと迂回路の標識を頼りに進みます。北へ向かうにつれ視界に入る崩れた家屋、倒壊したお墓や石塔、倒木落石は増えて行きます。能登半島西部の海岸線に出ます。砂浜の向こうにゴツゴツとした岩場のある、不自然な、いや自然の力ですから不自然ではないのですが、異様な風景が広がっていました。地殻変動により隆起した海岸です。圧倒的な地球の力を目の前にすると無力さが身を包みます。祖院に到着しました。回廊は潰れ、いくつもの建物は崩壊しもしくは傾き、瓦は落ち、扉が外れ、室内は散乱しています。
2007年の地震からの復興が終わり、これからという時に17年前に逆戻り。復興はもう無理なのではないか、振り払おうともそんな思いが頭の中に去来します。
祖院の中ではお坊さん達が支援物資の受付や片付けで忙しく働いています。ある方が私にこう語りかけました。
「見たかい?どう思った?これから復興させるよ、絶対にね」
皆黙々と自分の仕事を続けていました。
「花が咲くから春が来る」と言われた禅僧がいました。春が来るから花が咲くのではないのです。花とは我々自身のこと。私達の行動のあり様、心のあり様で世界はその通り姿を変えます。希望を持てば希望ある世界、持たなければそれなりの世界。
復興ははるか先に待つものではなく今ここに訪れています。復興へ向けて動く限り美しい能登は目の前に広がり続けます。
その後も何度も訪れる度に姿を変えていく風景、復興へ向けて働く方々の姿をみてそう思いました。
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