お釈迦様の弟子の一人が、お釈迦様に死後のことについて尋ねました。するとお釈迦様は、「薪が燃え尽きて灰になるようなものだ」とお答えになったそうです。このお答えについては、後に様々な解釈が生まれました。「死んでしまったら、灰になるだけ」と言う人もいれば、「そうじゃない、肉体が滅するだけなんだ」と言う人もいます。どちらの考えが正しいのかは、死んでみなければ分からないことです。お釈迦様は、ただ死後の世界についてのみ心配する人には、決してお答えにならなかったといいます。それは先のことより、今を大切にしなさいという思いがあったからです。生かされている今、この時をしっかりと受け止めてこそ、未来は開かれるのだとお教えになりたかったからでしょう。幸せにしても不幸にしても同じ状態はいつまでも続かないし、これから起こることは防ぎようがありません。でも、もし逆に起こることが分かっていたらそれはそれで恐ろしいものですので、わからない方がいいとも言えます。お釈迦様は「明日のことを思い煩ってはいけない」とおっしゃっておられます。また「過去のことを考えてはいけない」とも言っておられます。つまり、人間というものは、過去をくよくよしてはいけないし、また先のことを煩ってもいけない。今をしっかり生きなさい、とおっしゃっておられるのです。そして、我々が今日、この世に生を受けて過ごせるのは、ご先祖様があってこそです。我々が木の枝とすればご先祖様は根っこであり、見えないけれども命の根源なのです。あらゆる物や人々、そしてこの大自然も根源であり、それによって生かされていることを忘れずに今を大切に生きましょう。
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