曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)
たのしみ法話
たのしみ法話

身体からの手紙 []

三重 善光寺 牧野正人 師 

一日何度も用を足すトイレには烏枢沙摩(うすさま)明王(みょうおう)と申します神様がいらっしゃいます。その烏枢沙摩明王はあらゆる汚れを炎で焼き尽くすと言い伝えられております。
覚えている方も多いと思いますが二〇一〇年に「トイレの神様」という実話を基にした歌が発表されました。簡単にあらすじを申しますと祖母が孫娘にこう言いました。「トイレには神様がいて毎日きれいにするときれいな人になるんやで」と言われて祖母と一緒に毎日トイレをきれいにします。しかし、もう祖母はこの世にはいませんが、孫娘は今も変わらずトイレを磨いているそうです。
日本では古くからトイレを清潔な場所としておりました。禅宗では(東を司ると書き)東司といいまして七堂(しちどう)伽藍(がらん)の大切な一つとされております。永平寺を開かれた道元さまの著書 正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)「洗浄(せんじょう)の巻(まき)」に東司が記されていることは有名なことであります。顔を洗う、髪を剃るのと同じく東司での作法が記されているのです。例えば東司の扉は左手で閉めること、立ったまま便器に向かって三回弾指(だんし)(パチンと指を弾く)すること、その時左手は拳で左腰につけること、便器を汚してはならないこと、壁に落書きをしてはならないこと等、動作の一つ一つを非常に細かに規定し説明しているのです。ここに道元さまの威儀即仏法【それは日常の所作や身なり=(威儀)を調えることが仏そのものの姿である=(即仏法)】を重んじる姿勢が込められているのです。
東司は身体からの手紙を受け取る場でもありますので是非きれいに持(たも)ちたいものです。人によって体調の具合や日々の習慣の違いはあるものの、毎日身体からの手紙がやってまいります。少し不安を感じた方はゆっくりと休息をとったり、時にはお寺で坐禅を行じたり、あるいは医師からご指導をいただくなどをお勧めいたします。
私たちは食事をとり、明日へのエネルギーをいただいております。誰もが食べればやがて体の外に排泄されますが、私たちの口に入るものは決して食べられるために生まれてきたわけではないと考えることが大切なのです。だからこそ感謝をして必要最小限だけいただくように心掛けをお願いいたします。その心掛けは身体からの手紙として出てまいりますので受けとめる東司をきれいにして日々過ごしてまいりましょう。

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