先日、私が幼少期の頃のアルバムを見ていると、お寺の本堂で祖母とお檀家のおばあちゃん達と一緒に写っている写真を見つけました。お釈迦様の御誕生をお祝いする降誕会の良き日に、綺麗な花々で飾られた花見堂の前で、私の手元には祖母の御詠歌の道具が広がり、祖母たちの真似事をしていました。御詠歌とは梅花流詠讃歌といいまして、お釈迦様や、道元禅師様、瑩山禅師様の教えや御生涯を歌詞にした詠讃歌です。この御詠歌を祖母は毎日の様に練習し、夕食の後は祖母の部屋から、いつも心地よい声が聞こえてきました。
私が三十二歳の時、祖母は亡くなりました。私には祖母を亡くした悲しみと共に後悔の念が押し寄せました。その後悔とは、もう少し祖母と話をしておけばよかった、もう少しお見舞いに行けばよかった等です。
私はその当時何気なく御詠歌を始めていて、何となく続けていましたが、今では祖母が大好きだった御詠歌を祖母への供養の為に続けていく事が、私の御詠歌をやる目的の一つとなりました。
私の好きな御詠歌の中に、『法灯』という曲があります。「世を照らし 人をば照らし永久(とこしえ)に 輝きわたる 法(のり)の灯(ともしび)」という歌詞です。法(のり)とは法律の法と書きます。要約すると、「お釈迦様より道元禅師様に受け継がれた仏法の灯火は、永遠にいつまでも世の中を照らし、そして、人の心を照らし続けて下さいます。」という内容です。
今私は御詠歌の師範としてお檀家様とお寺の本堂で、月に何度か練習をしております。そうしていますと。三歳の息子がやってきて、私の膝の上にちょこんと座り、みんなの真似事をします。まさに冒頭で述べました写真の風景がそこにはあります。おばあちゃん喜んでくれていますか。
私はこれからも祖母から頂いた仏法の灯火を途絶えることなく、大切に灯し続けていきます。
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