二〇二〇年三月二十九日。御年(おんとし)数えの七十一歳で、ドリフターズの志村けんさんが、この世から旅立ってゆかれました。わたしが小さい頃は、テレビが一台しかなく、テレビのチャンネル権は父親が持ち、私たち子供は、自由に好きな番組を見ることができませんでした。しかし、毎週土曜日の夜八時の番組「八時だよ、全員集合」だけは、親と一緒に見られる唯一のテレビ番組でありました。
一時間のお笑い番組で生放送。身体を使う体当たりの番組構成。天井からやかんが落ち、大きな金(かね)ダライが落ちてくる。張りぼての大きなスタジオの壁が、人に向かって落ちてくる。毎週、ハラハラ、ドキドキしながら見ておりまして、人を元気にし、笑顔にしてくれる番組でありました。
今年の初め頃から、コロナウイルスの感染拡大のニュースが報じられ、まだ、わたし自身も身近なものだと感じられずにいた頃。そんな頃にニュース速報で飛び込んできた、志村けんさんの訃報。たくさんのレギュラー番組をかかえ、お笑い界のスターがコロナウイルスの感染で亡くなってしまった。
身近な人ではないけれども、テレビを通して身近と感じている人が亡くなった。このウイルスは、とても危険で大変なものだと肌で感じた。手洗い、うがいを心がけ、アルコール消毒する。お寺の法事でもマスクを付け、座る人との間隔を開ける。
道元禅師様は言います。「人の命は、次の瞬間にも、どんな重い病気にかかり、いつの間にか重い苦しみに打ち震えることがあるのだ」と。私たちは、ウイルスが蔓延していない、マスクを付けない生活があたりまえだと思っていた。しかし、今は違う。
私たちは、この日この一日を、たった今だけの命であることと思って、時を無駄にせずに生きて行かなければならないと教えています。
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