私のいる豊橋市には、ブラックサンダーという有名なチョコレート菓子が生産されています。一度は耳にされたり、あるいは、お口にされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。お子さん、お孫さんが好きだよ〜という方も多いと思います。
さて先日、50代くらいのお檀家さまが、ご相談にやってこられました。
ひとしきり話が終わると、突然
「これを『おてらおやつクラブ』へお供えしてください」とブラックサンダーがたくさん入った箱を差し出されたのです。
おてらおやつクラブというのは、主にシングルマザーや貧困層の家族をサポートする組織へ、お寺にお供えされたお菓子を、おすそわけするという活動です。
日本中で1000を超えるお寺が協力し、生活に困窮している子どもたちに、元気と笑顔を届けたい、と活動しています。
つまり、このお檀家さまは、子どもたちのためにブラックサンダーを届けてほしい、ということだったのです。
突然に「お供えをしてください、」言われ、正直、私は面食らってしまったのですが、次の瞬間、「ああ、これこそ本当の布施なんだ」と雷に打たれたような感銘を受けました。
なぜならば、そこには純粋なる”布施の精神”が宿っていたからです。
『倶舎論』という経典には、布施をするとき、やってはいけない不純な動機を7つ挙げて戒められています。見返りを求めるため、自分の名声を高めるため、習慣だから仕方なくする、など、現代の我々にも耳が痛いことが書かれています。
また、みなさんもご存知の修証義には”布施というは貪らざるなり”というフレーズがありますね。
元となった正法眼蔵『菩提薩埵四摂法』の巻には、続いて「むさぼらずというは、よのなかにいう へつらわざるなり」ともあります。周りから良い人だと思われたいというような、へつらいの心も起こさず、この方は見ず知らずの子どもたちを想って布施をなさったのです。
こんな世知辛い世の中においても、真実の布施の姿があったのかと、私も襟を正さずにはおれませんでした。願わくは、私自身も同じ心持ちを目指して今を生きていきたいものです。
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