暮れの秋 ことにさやけき 月かげは 十夜にあまりて みよとなりけり
(『千載和歌集』雑歌下 1189 賀茂政平)
晩秋の澄んだ夜空に美しく、少し欠けた月が上ります中秋に見える「十五夜」の満月と違い、少し欠けた「十三夜」の月は、陰影を持った美しさがあります。
旧暦九月十三日の夜は、古来より「十三夜」と呼ばれ「十五夜」と並び、名月の夜とされてきました。
「十三夜」の月を愛でる文化は日本独自のものだそうです。去りゆく秋という季節を惜しみながらも、まだ残る秋の美しいその姿に、多くの人々が魅了されてきました。
花は盛りに、月は隈なきをのみ、見るものかは
(兼好法師『徒然草』)
花は花盛りの頃だけが見るべきものだろうか、月は曇り陰りの無いものだけが見るべきものだろうか。昔の人はこのように問いかけ、移り行く不完全なものに情緒を感じていたようです。
さて、これは花や月に限った話でしょうか?私たち人もまた、変わりゆく不完全な存在です。決して花盛りばかりでもなく、満月ばかりでもないでしょう。
しかし、そんな移り行く不完全な人生を、それでもいいではないかと、受け入れることできるならば、たとえ欠けたところがあったとしても、足りないところがあったとしても、それは名月なのだと「十三夜」の月は教えてくれているように感じます。
人生も晴れたり時雨たり。秋空もまた美しく移り変わっていきます。
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