曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

思いやりは耳を傾けることから []

三重 東正寺 片野智博 師 

皆さん、「観音様」と聞くと、どのようなお姿を思い浮かべるでしょうか。やさしいお顔、穏やかな微笑み、そしてすべてを包み込むような慈悲のまなざし。観音様は、苦しむ人や悲しむ人の声を静かに聞き、その痛みを和らげてくださる存在として、長い年月にわたり人々に寄り添ってこられました。

 観音というお名前は、「音を観る」と書きます。これは、人々の声、さらには声にならない心の奥の思いまで、ありのままに受け止めてくださるという意味です。私たちは日々の生活の中で、つらさや寂しさにふれたとき、つい「誰にも分かってもらえない」と感じてしまうことがあります。しかし観音様は、そんな小さな声、涙の奥にあるかすかな訴えまで、そっと聞き届けてくださっているのです。

 現代の私たちを取り巻く環境もまた、声の届き方を変えています。SNSでは気軽に自分の気持ちを表現できますが、投稿だけを見ると、毎日が充実していて悩みなどないように見えることが多くあります。明るい写真や楽しそうな言葉の裏に、実は孤独や不安が隠されていることも少なくありません。そのとき私たちは、表面だけで判断するのではなく、「この人はどんな思いでこれを発信したのだろう」と、そっと心を寄せてみる。それもまた、観音様の「音を観る」姿勢に近づく大切な一歩と言えるでしょう。

 では、私たちが観音様のように生きるためには、具体的に何ができるのでしょうか。それは、「人の声を聞く」という姿勢を日々大切にすることです。家族の何気ない言葉の調子、友人の少し沈んだ声の変化、地域で困っている方の小さなつぶやき。そうしたささやかな声を聞き流さず、「この人はどんな気持ちで話しているのだろう」と想像しながら耳を傾ける。その思いやりの心が、観音様の慈悲に通じるものとなります。

 どうぞ皆さん、今日からほんの少しだけで構いません。身近な人の声にそっと耳を澄ませ、思いやりの心で向き合ってみてください。その優しい心が、きっと周りの世界を温かく照らす光となり、あなた自身の心をも和らげてくれるはずです。

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