曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

梅の木が教えてくれたこと []

愛知 神昌寺 柴田昌法 師 

私が住職を勤めさせていただいているお寺の参道の脇に一本の古い梅の木がございます。
春には花を咲かせ初夏の訪れと共にその枝には青々とした若葉が茂り、沢山の実を実らせます。
しかし、実はこの梅、今から数年ほど前に台風による激しい雨風により上半分がポッキリと折れてしまったのです。無残にも参道に倒れ落ちたその姿を見て、ああ、もうここまでかと半ばあきらめておりました。しかし自然の力には本当に驚かされます。折れた幹から毎年一本、また一本と細い枝を少しずつ伸ばしていき数年かけ元気な姿を取り戻していったのです。
「生きよう。生きよう。」
と折れた幹から無数の細い枝を天高く伸ばす
梅の姿に私は我々、人の姿を重ね合わせます。
それは、すなわち幹から伸びる若い枝の一つ一つが今を生きる私やあなたの姿であり、若い枝を下から支える大きな幹が私たちの御先祖さまたちです。どっしりと構える幹という支えがあればこそ若い枝は、その先に葉を茂らせ花を咲かせ、たわわな実をつけることができるのです。
それと同じ様に私たちは御先祖さまたちのかけがえのない積み重ねがあればこそ今という時を大切に懸命に生きることができます。
お釈迦さまは「縁起のみ教え」をお説きになられました。それは私たちは一人で生きているのではない。あらゆる関わり合いの中で沢山のお蔭様を頂戴し、生かされているのが命であるというものです。
過去無量の先人の方々の命を受け継ぎ生かされいるのが、あなたの命です。自身の命が多くの人々の支えの上に成り立っていることを自覚すればこそ自身を大切にしながらも「自分も誰かの支えになろう。」と他者への寛容な心や思いやりの心が生まれてくるはずです。どうぞ、その尊いお気持ちを心に留めるだけでなく自らの行いとして日々の生活の中で表し良き縁を紡いでいっていただきたいと願っています。

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