曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

誕生日を想う []

静岡 萬松院 吉田宏得 師

どなたにも必ずあるのが、お誕生日です。毎年、一つづつ年を重ねて人生の年輪を刻んでいきます。
その年輪の深さや濃さは人それぞれで、日々の歩みの差はありますが誰にも平等に時は過ぎていきます。
ある時、80歳半ばを迎える方より次の様なお話を聞きました。
「和尚さん、毎年の誕生日は誰かがお祝いしてくれますか?」と尋ねられて私はとっさに、「子供の頃には、家族が祝ってくれましたが、成人してからはあまりないですね。」と答えると、「世間では、お誕生日は年に一度祝福してもらえる時だと思っている人が多いですよね。私は、祝ってもらう時だと思ってはいません。自分の命を戴いたご縁に対して感謝する時だと思っていますよ。私が生まれて日々を営むには、見えない大勢の支えにより時を刻むことができるのです。人身得る事難し、仏法遭う事稀なり・・・と、お経にありますね。」
「私は戦線を経験しました。大勢の大切な人達を戦禍の犠牲に見送りました。生き延びられている事の尊さを感じました。だから、自分の誕生日は祝ってもらう時ではなく、今年もお陰様で無事に誕生日を迎える事が出来ました。有難うございます。沢山のお陰様に支えられていますと、先祖さまや親たちそしてご縁のあったホトケ様達に対して、感謝の手を合わせさえて頂いています。」40歳代の私はハッとさせられました。
この方に巡り合ってから私は、誕生日に対する想いが一変しました。それからは、誕生日は祝ってもらう時ではなく、自分の命に対するお陰様に感謝する大切な時だと想い、まずは感謝の念で迎える様に勤めています。
この古老は、私がハワイ布教で巡り合ったベトナム戦争を体験した方でした。感謝の念を抱く毎日が肝要ですが、せめて誕生日を始めとし、心の底から感謝の念を抱くようにと・・・ 古老より学びました。

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