曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

人と人の間 []

静岡 太月寺 伊原昌憲 師

 小学生の頃の理科のテストで、哺乳類をできるだけ多く書き出すという問題がありました。いくつかの動物を思い付く中で、私は一番先に「人間」と書きました。しかし残念ながら採点は「△」です。生物の種類としては片仮名で「ヒト」と書くのが正解とのことでした。「ヒト」と「人間」、何が違うのか疑問に思ったことを覚えています。
私達が「人間」という言葉を使う時には、ただの動物としてではなく、社会的な意味合いを含むことが多いようです。
この「人間」という言葉、元々は仏教用語でした。人間とは「人」の「間」と書きますが、この「間」とは空間、世界のことです。今では「人」自体を意味する言葉として使われますが、「人間」とは「人の住む世界」「世間」を示す言葉でした。
そう考えると、人間の本質は人と人の「間」にこそあるのかもしれません。人と人とが関わりあって、その間に関係ができて初めて「人間」と呼べるのでしょう。
「人は一人では生きられない」と耳にする事があります。片仮名で表す生物としての「ヒト」はとても弱い生き物です。生まれてから成長するまではもちろん、大人になってからも一人では生きていくことができません。住む処や食べる物、着る服といった普段気にも留めないような事にも、作る人や運ぶ人、売る人に買う人、その他、想像もできない程に数多くの人々が関わっています。
私達は自分一人の力だけで生きているように考えがちです。
しかし、何気なく過ごすこの日々も数限りない人々が互いに
支え合う事で成り立っています。
人と人との関係に思いを巡らせ、感謝の気持ちを感じられる事も「ヒト」と「人間」の違いなのかもしれません。

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