曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)
たのしみ法話
たのしみ法話

不完全な者同士だからこそ支え合う世界 []

静岡 大泉寺 小島健布 師

 実は私、今から2年前に、6メートルの高さの崖から落ちまして、コンクリートに着地。その結果、両かかとを骨折する大けがをしました。
2カ月半の入院を経て、お寺に戻れたのはいいのですが、まだ治り切らない足を引きずりながらの生活は中々思い通りにはいかず、気持ちが落ち込み、精神的におかしくなってしまいました。そんな私に対し、師匠が、「2カ月半入院していたのだから、少なくとも2カ月半は何もするな」と言ってくれまして・・・。その言葉のおかげで随分と楽になりました。
また師匠以外にも、私のことを心配して、多くの方々が寄り添い支えてくださいました。 
ガンステージ4と診断されたのにもかかわらず、何もなかったかのように振る舞う市役所の職員さん。聴覚障害があり、幼い時から周囲に馬鹿にされた経験を持ちながらも、自分の道を信じ突き進もうとするシステムエンジニアさん。心が疲れ仕事をやめるも必死に次のステップへ歩もうとする男性。
私も含め、みんなそれぞれ心に何かしらあり、そんな人たちがお寺に集い、みんなで支え合ってきたこの2年間でした。
仏教用語に、同じ事と書いて「同事」という言葉があります。相手の立場になる。相手の身になる。ということですが、スピードスピードの現代社会において、そういった時間がとれない、少なくなっている、なんて方々も多いのではないでしょうか。
人間は弱いものです。そんな不完全な者同士が、完全なものを求めてゆくには、それぞれが補い合って生きてゆくしかないのだと思います。その不完全な者同士が、支えあい、包み込み合いながら、生活しあう。そんな世界が幸せな世界なのだなぁと、最近思うのです。

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