曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

美味しいお茶 []

愛知 照徳寺 鬼頭賢光 師 

 『喫茶喫飯(茶(さ)に逢(お)うては茶(さ)を喫(きっ)す、飯(はん)に逢(お)うては飯(はん)を喫(きっ)す)』という言葉があります。喫茶店の喫茶に喫茶店の喫にご飯の飯と書いて『喫茶喫飯』です。これは、大本山總持寺を開かれた瑩山禅師様のお言葉です。お茶を飲んだり、ご飯を食べたりという、何気ない日常の一コマ一コマに真摯に向き合って、今を大切に生きましょう。というのです。
 この言葉に初めて出会ったのは、私が總持寺で修行をしていた頃です。修行が辛かったのでしょうか。ある時、ぷつりと糸が切れたように、何もかもが嫌になってしまいました。
 そんな時、修行僧の生活を見守ってくれている方、老師という方が「坐禅をしましょう。」と誘ってきたのです。嫌でしたが、断れるわけもありません。そうして、老師と二人きりの坐禅をする事になったのです。
坐禅が始まると、老師は丁寧に姿勢、呼吸そして心の調え方を教えてくれました。私の姿勢が崩れるたび、繰り返し繰り返し丁寧に教えてくれたのです。どれくらい坐禅をしていたのでしょうか。お茶のいい香りに、ふっと我に返ると、気持ちがとても楽になっていました。そして、老師が「では坐禅は終わりにして、お茶を飲みましょう。」と言ったのです。
老師がいれてくれた温かいお茶を飲みました。その時老師が、私にこの言葉を伝えてくれたのです。
「『喫茶喫飯』という言葉があります。この言葉は、お茶を飲んだり、ご飯を食べたりという何気ない生活にも一つ一つ丁寧に向き合って、精一杯に行えば、心が迷うこともないと教えてくれています。あなたは、丁寧に坐禅をしなさい。必ず、自分の心と向き合えます。」と。
当時の私には、この言葉は難しすぎました。ですが、ただただ、老師の入れてくれたお茶は、何とも美味しかったのです。

皆様は、忙しい生活の中で、あれもこれもしなければと考えしまい、不安で心がいっぱいになってしまう事はありませんか。そんな時は、一つ一つの事に丁寧に向き合ってみましょう。不安が徐々に遠のき、気持ちが落ち着いてくるものです。
是非、気持ちが落ち着かなくなった時、この『喫茶喫飯』という言葉を思い出して下さい。
そしてもしよろしければ、少しの時間でも、坐禅をしてみませんか。

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