曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)
たのしみ法話
たのしみ法話

野菜に込められたまごころ [No,1380、1月22日〜1月28日]

愛知県安城市 太平寺副住職 山口哲生 師

「他は是、我にあらず」
他人がしたことは自分のしたことになりません。どんなに大変で苦労の多いことでも、他人に任せず、自分自身の手で行って、初めて自分の修行になります。その修行を通して、その修行の尊さ、周りの人のまごころに気づくことができます。
 私がおりますお寺では、毎月観音様の法要のあと、皆さんでお昼の食事をいただいております。台所では私の母が中心となって、お檀家の方からあがった野菜などを利用して、その日の食事を支度します。私はこれまで料理の経験が少ないことを理由に、準備を手伝うことがありませんでした。
 そんなある日、いつもお手伝いに来てくださる方が病気になり、私も急遽、台所のメンバーに加わることになりました。普段持たない包丁を手に、「煮物のナスはどう切るの?」と尋ねる私に、母は、「三センチぐらいの厚さで切れば、食べやすい大きさになるよ。」「たくあんの厚さも、高齢の方でも噛むことが出来るように、出来るだけ薄く切るようにするんだよ」とアドバイスをくれました。私はナスやたくあんを召し上がる、お檀家さんのニコニコした顔を思い浮かべながら、「安心して喜んでもらえるといいな」と心を込めて刻みました。
 私はふと、今まで、自分がいただいていた料理にも、母を始め、野菜を作った方も同じように、食べる方のことを思いながら、用意していたんだなと思いました。この日、自分自身が料理をしたことで、今まで気づかなかった様々な人のまごころに、気づかせていただきました。
 「他は是、我にあらず」自分自身の手で行って初めて分かる大切なこと、皆さんの周りにもたくさんあります。自分の心と体で感じ取ってみてはいかがでしょうか。

| top | 前のお言葉 | 886 | 887 | 888 | 889 | 890 | 891 | 892 | 893 | 894 | 895 |