曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

物があふれる社会を生きる [No,1393、4月23日〜4月29日]

岐阜県揖斐郡春日村 観音寺住職 田中和彦 老師

 年度が替わり、多くの方が新しいスタートを切っている事と思います。が、近頃の話題といえば、本来助け合って生きていかなければならない人達が、互いに憎みあったり、心のそこから理解をしてあげなければならない人たちが、その悩みを打ち明けられなくて最悪の事態になってしまったりと、人と人との絆が薄れてしまっている事に原因が有りそうな話題が多いように思います。現代社会を生きる日本人の心のあり方を考える上で外す事の出来ないのが戦後の高度経済成長に始まり、バブル時代、又、バブルがはじけた後の長引く不況という一連の時代背景が大きく関わっていると私は考えます。食べるものすら無い時代を経験し、やがて消費することが幸せの象徴のような使い捨て時代に入り、そのような癖が付いてしまった後、町には贅沢な物で溢れているにもかかわらず、深刻な不況の為多くの方が、消費を慎み日常的な辛抱の中で生活をしておられます。しかし、世界には以前の日本のように今日の食べものにも困り、眠る場所を求めて路頭に迷っている人達が多くいらっしゃいます。時代の寵児としてマスコミに担ぎ出され、成功者の代表みたいな顔をしている人達はキリの無い欲望の中でこの先何に心の平安を求めるのでしょうか?勝ち負けの生活の中で、一度、階段を踏み外せばその存在すらも社会から抹消されてしまいます。人や物を大切にし生活するには充分足りている毎日の暮らしの中で感謝の気持ちを持つだけで、果ての無い欲望から開放され、本当に自分が必要と思う事に価値を見出し自分一人をスタートとして、小数の関わりでも良いからもっと深い意味のある心の安らぎを得ていけたらとても素晴しい人生が送れます。そろそろ、他人と比較するのをやめて、一度、自分の幸せについて思いを巡らせて見てはいかがでしょうか?

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