最近、父親が子どもを死なせてしまったり子どもが親を死なせてしまったりと、悲しい事件をよく耳にします。福井県にあります大本山永平寺を開かれました道元禅師様は典座教訓という書物の中で老心という言葉を記されております。老心とは父母の心、つまり、親の心である。どんなに貧しい者も、困っている者も、親というものは我が身をもかえりみず、ひたすらわが子をかわいがり、育てる。そのような心のはたらきとは一体どういうものか、それは父になり、母となりはじめて知ることができる。子どものことを思い続けるような心にいつも自分の心を置く人にして、はじめて老心の何たるかをさとることができる、と。今現在のこの複雑な世の中にあっても、親というものは、必ず子どもに対して老心を持っているでしょう。しかし、社会家庭その他諸々の人間関係などの中で、親と子のすれ違いが生じ、心の通じ合いがなくなり、お互いの思いやりを理解しあえず、憎しみ合うことが多くなっているのでしょう。親は、親自身の老心をしっかりと育み、子どもは親の老心を思いやり、お互いがお互いを思いやるそれぞれの心の成長で、必ず憎しみを思いやりに変えられます。相手に憎しみを持つ前に自分自身を見つめる。そしてお互いを思いやり合い、悲しい事件が少なくなっていくことを願います。
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