曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

「いただきます」のこころ [No,1401、6月18日〜6月24日]

愛知県豊川市 正岡寺住職 井上義法 老師

 私たちの日常生活にとって必要不可欠な行為というと何があるでしょうか?その中のひとつに食事があります。食事を、ただ“めしをくう"として捉えるのか、“ご飯を頂く"という思いを持って積み重ねるかでは、自ずとその人格の形成に大きな影響を与えるでしょう。
また、国会においても平成17年6月には、「食育基本法」が成立し、子どもたちに対する食育の重要性と心身の成長及び人格の形成に与える影響が述べられ、今、改めて食が見直されています。
 日常の生活がそのまま修行であるとお考えになった道元禅師様は、この食事についても、やはり大切な行為であると捉えられ、『赴粥飯法』を著されております。その中で、食事の意義、食前のお祈り、食事の作法など事細かに説かれ、“法はこれ食、食はこれ法なり”と述べられています。“もし私たちが、正しく食事をするのならば、その食事というものに仏様の姿が現れていますよ”というのです。つまり正しく食事をすることが、正しく生活をすることに、そして正しい心を育むことになるということです。
 今、目の前にある食事、お米の一粒、野菜の一切れが如何に多くの自然の恵みを受け、人の手を経て、ここに届けられているのか、ものの命を頂いているのだという感謝、自分がそれを頂く資格があるのかという反省、そして自分がどのようにありたいのかという誓いの念を持って食事を頂いたとき、それが“めしをくう”という行為から“ご飯を頂く”“ものの命を生かしきる”という正しい食事になるのです。
 私が勤めております幼稚園でも子どもたちは手を合わせて“お父さん、お母さん、美味しい給食を有難うございます。残さず、美味しく頂戴します。いただきます。”と挨拶をしてから頂き、“ごちそうさま”で終えることになっています。最初は目の前に置かれたら、“いただきます”の前に手を出してしまった子も、毎日の積み重ねによりしっかりと“いただきます”が言えるようになります。やがては“くう”から“たべる”そして、残さず感謝して“いただく”ことができるようにと願い取り組んでいます。
 食育への関心が高まり、改めてこの“食”が見直される今、感謝の心をこめて“いただきます”“ごちそうさま”をして、ただ“めしをくう”のではなく、“ご飯を頂く”を心がけ、毎日を積み重ねていきましょう。

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