曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

地球上の生物としての「利他行」 [No,1406、7月23日〜7月29日]

静岡県浜松市 龍泉寺副住職 白井竜之 師

 今、地球上では多くの種類の生物が繁栄をしていますが、絶滅してしまったものも少なくありません。では、繁栄と絶滅を分ける原因は一体何でしょうか。ある研究によると、「利他的な行動」つまり、自分ではなく他の者のための行動を、集団としてとれるかどうかが、原因の一つとして考えられています。
 地球上で最も繁栄している種の一つ、アリを例の挙げてみましょう。働き者という印象のあるアリですが、実際に働いているのは、巣にいる3.40パーセントだけだそうです。その3.40パーセントのアリが食料を調達し、子育てをすることで、巣全体の生活を支えています。これは、まさに「利他的な行動」だと言えるでしょう。
 ただし、このようなアリの行動に、感情は関係ありません。アリは、単に本能によって動いているだけです。
 では、私たち人間ではどうでしょうか。他の人を助けたり喜ばせたりすることが、自分の喜びにつながっていく、これこそがアリとは違う人間の感情による行動であり、「利他行」だと言えるでしょう。
 このような喜びを多くの人が求めるようになる、「利他的な行動」を行うことが当たり前になる、そんな社会を築くことが、地球上で生きていく生物としての義務であり、人類が繁栄するための力となる、ということを、この研究結果が教えてくれているのではないでしょうか。
 「情けは人のためならず」という言葉があります。他人に親切にする、つまり「利他行」を行えば、その報いはいつか自分に返ってくる。確かにその通りですが、情けは自分のためになるだけでなく、実は人類のためにもなっているのです。

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