先日、お檀家のご婦人のMさんが、自分で育てた蓮の花をお寺に持って来てくれました。
早速ご本尊様にお供えし、家内安全のご祈願を申し上げ、併せて、先年亡くなられたご主人と二男の息子さんのご回向をいたしました。お勤めの後お茶を飲みながらMさんが「和尚さん、私は三人の子どもを育てましたが、子育ての頃、主人が仕事中大ケガをすることがよくあり、入院生活が長かったので生活も苦しかったのです。ですから私も温泉旅館に勤めながら、帰ってから夜遅くまで稲の脱穀をし、朝は早く田んぼに出て一仕事してから、勤めに出るという生活で、家計のために必死で働きました。長男が中学を卒業する時、本人は高校進学は無理だと諦めていたようですが、担任の先生から是非進学させてあげてほしいと言われました。経済的に苦しい状況の中でしたが、進学させることになりました。高校のあいだ五年間は」不思議に主人のケガもなく、順調に仕送りすることができ、無事卒業できました。その後は、幸い希望する方面に進み、今では家庭をもち頑張ってくれています。『無理するなよ』というと『お母さんの苦労に比べたら、無理なんかしてないよ』と答えます。親の必死で働く姿を子どもは見て育っているからこそ、優しい言葉もかけてくれます。通学カバンも買ってやれなくて手縫いの布バックで通わせました。貧しくて買ってほしいものも買えないことが却ってよかったように思います。今、豊かな世の中になりましたが、我慢させることが大事やと思いますねエ」と話されました。
道元禅師様は「学道の人は先ず須らく貧なるべし。財多ければ必ず其の志を失う」と示され、貧しさが人を作るということを教えられています。Mさんのお話を聞いて、私たちの生活についていろいろ考えさせられたことでした。
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