曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

菊の花びら [No,1417、10月8日〜10月14日]

静岡県浜松市 東光寺住職 水谷明嗣 老師

 「菊の香や 奈良には古き 仏達」
 これは、松尾芭蕉の俳句です。古き町並みの中で、菊のどっしりとした重量感と気品のある様子が感じられます。この菊の花も、あんなに立派な花を咲かせるには、たいへんな苦労があったことだと思われます。菊は病害虫に弱いし、水のかけすぎも良くないそうです。しかし栽培された方々は、いたわりの言葉よりも「きれいだね」の一言によって、大変力づけられるのだそうです。
 よく「相手の立場で考える」と言いますが、それを私たちの曹洞宗では「同事」と言います。ドウジは、同じ事と書いて相手と同じ事情、同じ思いにひたることを言います。では、道の脇のお地蔵さんと気持ちを通わせることが出来るのでしょうか。あの暑さ寒さの中でも立ち続けて、私たちを見守っていて下さるお地蔵さま。それをエアコンの効いた車の中から見るだけではなく、外へ出て近付いてみましょう。口元をぎゅっと食いしばっている日と、ゆるんでほほえんでいる日があるように見えませんか。実は、自分の心が鏡のように映し出されて、戒められたり励まされたりするのです。
 このように「同事」と言って「相手の立場で考える」とは、自分から相手に一歩、思い切って近づくことから始まるのです。この相手との関係は先程の菊の花びらにも似ています。花びら同士は付かず離れず寄り添って、共に風や雨を堪え忍んでいるのです。
 今、この秋の清らかな空気の中に、華やかな香りを発した菊の花も、いつかは散り、また次の年の準備を始めます。皆様にとりましても、来たる子年が良い年でありますようにお祈りさせていただきます。南無釈迦牟尼仏

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