曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

十億円寄進の仏心を読む [No,1431、1月14日〜1月20日]

静岡県賀茂郡河津町 慈眼院住職 坪井弘司 老師

 神奈川県の米寿を迎えた横溝さんとおっしゃるご婦人が、四十年間こつこつと貯めた現金十億円をふるさとの南足柄市に寄附したというニュースを聞きました。そしてその十億円の使い道は、子供逹のスポーツ・文化活動を応援し表彰する『子供ノーベル賞』を実施するための資金にするのだそうです。将来的には教員育成や、母親教育の基金の設立も計画しているということ。八十八歳の誕生日に人のお世話にならず自分で歩けるということすら、ままならない私どもですが、四十代で『縁起のいい米寿に故郷に寄附をしたい』との請願をたて、その一念で節電や風呂の残り湯を洗濯やトイレに使い、特売で安く買えた分で貯金をしたという、本当の浄財ですよね。 
 まさに八十八歳の横溝さんのなさった行いは、お釈迦様の教えを行動で示したものといえます。着るものや食べるもの、遊びや旅行にと、贅沢三昧に使ったとしたらこのお金の価値はその時だけの快楽として生かされずに終わってしまいます。美味しいものだけを食べ、お手伝いさんを使って自分は毎日遊んで暮らしていたらきっとこの御年まで元気ではいられなかったでしょうしね。だいたい人間というものは全てのものに欲が深いものです。欲が深くて深い分だけ苦しんでいる。お金というのは魔物で『金持てば、持てば持つほど欲しくなり、無ければ無いでなお欲しくなる』これがむさぼりの心というわけですね。
 横溝さんの基金によって励まされ育てられた南足利市の子供さんたちがそれぞれの人生の中で素晴らしい知恵の輝きを放って、世の中にはばたかれる事を楽しみにさせていただけることも有難いことです。 何か自分にも人に与えられるものがあると気が付かれた方は是非行動に移してみてはどうでしょう。 優しい言葉穏やかな笑顔だけでもそれは立派な布施行となるとお釈迦様は説いておられます。

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