曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

愛語 [No,1436、2月18日〜2月24日]

岐阜県関市 薬師寺住職 宮本覚道 老師

 皆様は毎日の会話の中で、相手の言葉遣いや表情によって、とても晴れ晴れとした良い気持ちになったり、また逆に何か腑に落ちない気持ちを抱かれた経験をされたことがあるかと思います。
 「修証義」というお経の中に、愛する語り、と書いて「愛語」という言葉が出てくるのをご存知でしょうか。「会話をする時には、愛する心をもって人に接し、思いやりのある言葉をかけ、優しさ、温かさをあげるように心掛けなさい。」ということが記されております。
 褒められたり、感謝の言葉を聞くと、人は優しく明るい気持ちになります。また、頑張ってほしい、成長してほしい、という願いがこもった誠実なアドバイスは、その人を勇気付けます。しかし、けなされたり、不誠実な言葉は人を苦しめてしまいます。自分の一言によって相手を苦しめたり、悲しませることの無いようにしないといけません。この様な言葉を使わないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。それは道元禅師様がすでにお示しくださっております。「知るべし。愛語は愛心より起こる。愛心は慈心を種子とせり。」というお言葉です。慈しみの心を元にしてお話しなさい、ということです。相手を慈しみながら語る、誠実に語る、それによって相手の心に響き、心と心が通じ合う。これこそが愛語の精神なのです。
 愛語を直に顔をあわせて聞くと、最後には自然に顔がほころび、心が和みます。今日、親がわが子をベランダから突き落とす、子が自分の親を刺す、という信じ難い犯罪が数多く発生しておりますが、心と心が通じ合うこの「愛語」の精神が忘れられていることが一つの原因になっているのかもしれません。私たちは、普段から常に相手を思いやり、愛語をたくさん使って、心豊かな会話を心がけていきたいものです。そのようなことを心掛けていると、自分自身だけではなく周りの方々も穏やかな気持ちになり、安心の生活を送ることができると思います。今日からでも遅くはありません。この愛語というすばらしい言葉をお使いになってはいかがでしょうか。

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