曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

わかちあう喜び [No,1442、3月31日〜4月6日]

愛知県北設楽郡東栄町 龍洞院副住職 渡津恵正 師

 ちょうど一年前のことです。私はご縁がありましてタイのバンコクのスラム街に行ってまいりました。その町が火事で焼けてしまったということで、その町を復興するというボランティア活動に地元の若い和尚さん達と参加してきました。
 そこでの作業は、思っていたよりも厳しく大変なものでした。40℃近い気温と、照りつける太陽、なれない廃材の撤去作業等で、ある程度体力に自信があった我々もさすがにへとへとになっていました。しかし、一緒に作業をするこの街の人たちは暑さにはなれているのか何故か笑顔で元気に作業をしている姿がとても印象的で驚かされました。時々、現地の人達に逆に励まされながらも作業をして、何とか無事に予定していた作業を終えることが出来ました。
 一日の作業が終わり挨拶をして帰る時のことです。その街のあちこちから、沢山の人たちが見送りに来てくれたのでした。十人二十人という数ではなくおそらく百人近い人たちが笑顔で、我々と握手をして感謝をしてくれたのでした。そしてバスに乗って帰る時、見えなくなるまで手を振って見送ってくれた彼らの笑顔は、今でも鮮明に覚えています。
 そんな彼等のおかげで、私は何だか、今までの疲れがむしろ心地よさに感じていることに気がつきました。「ああ、人に喜んでいただけるということはこんなに、気持ちがいいものなのだなあ」と改めて発見することが出来ました。と同時に人に喜んでいただくということは、言葉は通じなくても、最後には自分の喜びにつながっていくのだということが分かった様な気がいたしました。
 私たちは毎日の生活で、自分以外の人に喜んでいただける様な生活をしていきたいものです。他人の喜びは自分の喜びでもあるのですから。

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