曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

生きていることのありがたさ [No,1451、6月2日〜6月8日]

静岡県庵原郡富士川町 宗清寺副住職 大嶽素宏 師

 今日のわたくしの話は、新潟で起こった地震や太平洋戦争を通して、生きていることのありがたさ、命の大切さについて皆さまと一緒に考えていければと思っています。
 わたくしが住んでいる静岡もずっと前から地震が来る、来ると騒がれています。四年前、新潟県を襲った大地震では、テレビが吹っ飛んできてケガをしたり、食器も飛び出し、入れても余震で足の踏み場のないありさまでした。実は妻は新潟出身で、静岡に嫁に来るときは、静岡は地震が来るから怖い、怖いと言われたものでした。怖いな〜と思い、さっそくタンスや冷蔵庫、特に冷蔵庫は重いのに、キャスター、小さなタイヤが付いていますので、非常に危険です。家具の固定を是非みなさま、しっかりしていただきたいと思います。
 7月16日柏崎を襲った新潟中越沖地震。由緒あるお寺の本堂が崩れてぺしゃんこになり、妻が14年通った道、商店街は廃墟のようなありさまでした。2階のタンスはバラバラにこわれ、コピー機も部屋の隅から隅へ動きました。義理の母は余震が続き車の中でなんと3日も寝泊まりしました。4日目に電気が来て、1週間たって水道蛇口から水が出て、ガスが来たのは一ヶ月くらいしてからなので、銭湯に通ったそうです。
 ありがたいことに食料は最優先で、静岡から宅急便で缶詰や飲料水翌日届けることができました。原発の安全神話も火災で揺らいでいて心配です。
 今の世の中、このような大きな地震などがない限り、食べるのに困ったりすることはありません。
 でもご高齢の方は戦争を経験され、困窮の大変さも実感されていたと思います。人権ということから考えれば同和問題という理由のない差別、イラク戦争でたくさんの自爆テロによって命を落とす人々、沖縄のアメリカ兵が日本の力の弱い女性に暴行しても余程のことがないと、悪い情報はマスコミも取り上げません。
 防衛大臣も原爆が落ちたことを「しょうがない」と発言し問題になり、人権という人間らしく生きる権利が残念ながら踏みにじられている現実があります。
 他の人の人権を考える思いやりがあれば「戦争」や「いじめ」がなくなる一歩となるのではないでしょうか。
 ある方丈さまから「1つのヤカン」お話を聞かせていただきました。
 S20年4月4日静岡市を襲ったB29爆撃機の空襲。8才になる長女を亡くし、20歳の母親は頭に大ケガをおいました。
 そのまま病院に入院し、また6月20日。静岡を襲った空襲ではおばあちゃんは40代、20歳の娘をベッドから必死に動かし逃げようとしますが、残念ながら重たくて動かすことはできません。
 空襲警報が「ウゥー」、せめて娘の亡骸がわかるように鉄のヤカンをベッドにくくりつけ、涙ながら、心を引き裂かれる思いで、動けない娘をおいて逃げたのです。
 その40代の若き女性の無念さ、そして戦争の非情さが胸に響きます。空襲が終わり、今まで病院だった場所は、見るも無惨な残骸、焼け野原となりました。ベッドの鉄枠には真っ黒に焼けたヤカン、焼き死んでしまった娘とおぼしき遺体に静かに手をふるわせながら手を合わせたのです。
 方丈さまから胸に迫る話、大切な話を聞かせてもらいました。
 わたくしたちは食べ物や物に恵まれています。いいことかもしれませんが、そのありがたさは忘れてしまうものです。今日は地震や戦争、静岡の空襲の話をしながら、生きていることのありがたさ、いのちの大切さについて考えてみました。

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