曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

愛語 [No,1453、6月16日〜6月22日]

静岡県静岡市駿河区 石蔵院住職 槇 恒泰 老師

 修証義というお経の中に「愛語」という教えが出てまいります。愛語とは、愛するに語ると書きます。つまり、言葉を大切にして、思いやりのある言葉、慈しみのある言葉を語る様にしましょう、という意味です。
 言葉はとても便利なものであり、お互いのコミュニケーションをとるのに都合のいいものです。毎日何百何千語もの言葉を喋り、そして聞いています。それが一年、一生となると、どれほどの言葉を喋り、聞いているでしょう。しかし、そんなに多くの言葉に毎日接していても、時として、たったひと言の言葉が、相手を深く傷付け、一生その言葉が、心を痛め続ける事があります。また反対に、たったひと言の言葉が、その人を勇気付け、一生の支えになる事があります。目に見えない、形のない言葉なのに、本当に不思議な力があるんですね。
 陸上競技のマラソンランナーが、あるテレビのインタビューに答えて、「42.195キロの間、沢山の『頑張れ』を聞くんですけど、どの頑張れも本当に力になります。特に、もうこれ以上は走れないと思った限界の時の『頑張れ』は、自分でも信じられないぐらいの力が湧いてくるんです」と言っておられました。
 また、私が、あるお通夜に行った時の事、ご主人を亡くされた奥様と、お話をした時の事です。奥様は、「主人とは40年も一緒にやってきましたけど、主人は無口で、一度もやさしい言葉を懸けてくれなかったんです。そして、病気になってからも、看病が長く続き大変でした。でも、最後にひと言言ってくれたんです『ありがとう』って。このひと言で、私の40年間は間違ってなかったんだと思えて、全てが許せました。本当に心が楽になりました。」と言っておられました。
 この様に、40年間の苦労が、たったひと言によって報われる時もあります。
 言葉とは、本当に不思議な力があるものですね。私達も、この言葉、大切にして、思いやりのある言葉、やさしさのある言葉を語る様に心懸けたいものですね。

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