東京神田の古本街はいつもたくさんの人で賑わっています。その街の一角にSという中華料理店があります。古本街を探索した後、そのお店でお昼ご飯をいただくのが私のたのしみです。
昼時になると店内はとても混んでいて、カウンターの向こうの調理場は大忙しです。四人の料理人がすばやく注文に応えていきます。『どうやったらこんなにたくさんの注文をさばけるんだろう』といつも感心してしまいます。しかも手際の良さだけではありません。出てくる料理がとても美味しいんです。また店の人たちが、みな楽しそうに働いているので、とても良い雰囲気なのです。
そのお店でこんなことがありました。すごく混んでいるときに、調理場から出ていった料理が戻ってきたのです。行き場のない肉野菜炒めが帰ってきました。注文を間違えたのです。持ち帰ってきた人は申し訳なさそうに、「まちがいでした」と謝りました。その時、私はどきっとしました。とても忙しそうだったので、間違えたことをその人が怒る、と思ったからです。私ばかりではなく店にいた人みんなが、どうなるんだろうと心配したようでした。ところが、すぐに聞こえてきたのは、忙しくて大変なときなのに、とてもやさしい言葉だったのです。
「本当はなんだった?」と、持ち帰ってきた人にとてもやさしく言ったのです。
わたしはほっとしました。そればかりかいっそう料理がおいしくなったように感じられました。
乱暴な言葉はだれだって使いたくありませし、まして云われたくありません。また近くでそんな言葉が使われているのを聴きたくありません。
忙しいときにはイライラして怒りっぽくなってしまいますが、そのようなときであっても、このお店の人のように、やさしい言葉がかけられるようにしましよう。
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