曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

心の言葉 [No,1467、9月22日〜9月28日]

愛知県知多郡南知多町 新蔵寺住職 竹川正悟 老師

 旅先での出来事です。夕暮れ時に、宿の周りを散歩していました。
 小学校3・4年生位の女の子が、自転車に乗ってこちらの方へやって来ます。塾の帰りか、お使いの帰りでしょうか。見知らぬ女の子がすれ違いざまに、私に向って元気よくこう言ったのです。
 「こんにちは。」
 私は、少し驚きながら、慌てて「こんにちは」と返事をしました。そして、横を通り過ぎてゆく女の子の、後姿を見送りました。
 その少女は、次の角を曲がり見えなくなりましたが、遠くの方でも、「こんにちは」と少女の元気のいい声が聞こえました。
 誰か別の人に挨拶をしたようです。
 私は、なんだか嬉しい気持ちになっていました。旅行も四日目、夕暮に独りでいた私の心にポッと明かりを点けてくれたように感じ、暖かくしてくれたように、思えたのです。
 そして、この嬉しい、暖かい気持ちは何でありましょう。
 道元禅師様の、御教えに、「愛語」というのが有ります、愛の言葉と書きますが、真に相手のことを思った言葉、人を生かし、人を仏道に導く言葉ということでありますが、挨拶の言葉もまた「愛語」になりうるともおっしゃっています。
 私にとりましては、この「こんにちは」の一言が正に 「愛語」でありました。
 私たちは、言葉に、思いや、願いや、祈りを込めることができるのです。
 きっと少女は、嫌々でも無く、仕方なしでも無くごく普通に、素直に「こんにちは」と言ったのでしょう。そう言った本人の心もまた嬉しくなることすら忘れて。
しかし、この何げない言葉が、「人を生かし、仏道に導く」こともできるのです。
 何故ならば、言葉は、心と心、人と人を、繋ぐことができるからであります。
 きちんと挨拶をしなければならないと感じました。
声を掛けられたならば必ず返事をしましょう。お座なりでなく、いい加減で無く、心を込めて、言葉を掛け合いましょう。
 何時でも、何処でもそして誰にでもできる日常の挨拶「おはよう、こんにちは、さようなら。」そして、「ありがとう」「ごめんなさい」
 これらもまた、思いを込めれば、「愛語」となるのであります。
 それでは、ご一緒に「愛語」を始めましょう。心を込めまして。
 「ありがとうございました。」

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