今年の夏は大変暑く、お盆参りをしていても連日の猛暑で汗が噴き出しておりました。しかしながら一年に一度各家庭のお仏壇を拝ませていただく有難いご縁と人との出会いに感謝しながら棚経をお勤めさせて頂きました。
私が初めて一人で回らせていただいたのが中学生の時でしたので、あれから十数年経ちますとご家庭の生活様式も少しずつ変化し、同様にお盆の飾り付けにも現代風の様式が感じられます。昔はお仏壇の横に盆棚を設け、夏の野菜や水の子をお供えされてご先祖様をお迎えする準備が感じられました。お勤めしている私にお婆さんが団扇で風をおくってくれたり、扇風機を準備されたお家では「ほら、和尚さんに風を当てないと」「そんなに強くしたらロウソクが消えてしまうよ」と後ろでやりとりしているのを感じながらお経をあげておりました。
近年、各家庭にエアコンが普及し、仏間でも快適にお勤めさせていただいておりますが、盆飾りが年々簡略されているのが少し残念です。私が思うに、「夏の暑い日に佛様が仏壇の中で息苦しい思いをするよりも、風通しの良い場所でくつろいでいただき、旬の物を味わって欲しい」と願う気持ちが盆の飾りや精霊流しとして今日まで受け継がれてきたのでは無いでしょうか。スイッチを押すだけで快適な温度になる現代では、佛様の気持ちになるのは中々難しいかもしれません。
さて、夏休みにはもう一つ行事がございまして「緑陰禅」という一泊二日の坐禅会が曹洞宗青年会の企画で毎年行われております。例年のベテラン参加者に混じって今年は“おじいさんと一緒こ参加した”という小学生の男の子がおりました。私は事務局で、この坐禅会の裏方を担当していたのですが、私が冷たいお茶の入容器と湯飲み茶碗を持って行くと、何故かこの少年が側にやって来て茶碗の場所を変えていきます。私は不思議になり「なぜ君は茶碗を置き換えるのかい?」と尋ねると、少年はニッコリ笑って「皆お茶碗使うでしょ、人が使ったものを間違えて使わない様にコッチは新しいですよって教えてあげようと思って」と答えました。なるほど、暑さで喉が渇いた参加者が少しでも快適に味わえる様にと願った少年の心配りだったのです。その言葉を聞いた私は心が大変清々しくなりました。
私達は日々の生活の中で知らず知らずに風を吹かしているのではないでしょうか?四季折々の変化の中で“暑い時は周りの方が清々しくなる様な風を”“寒い時は心温まる風を”お互いに味わえる生活を心がけたいものです。正しく念じれば自ずと吹く事でしょう。
少年の風の様に・・
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