曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

お釈迦様の修行に学ぶ [No,1496、4月6日〜4月12日]

静岡県富士市 養雲寺副住職 青野貴芳 師

毎日を心穏やかに楽しく過ごしたいと誰でも願うことでしょう。
 では、どのようにすればよいのでしょうか。その方法は、お釈迦様の修行の道筋から見て取ることができます。
 お釈迦様は、苦しみから解脱するために出家された後、まず、瞑想の修行に入られました。この瞑想は、古代インドより伝わる方法で、心の働きを止めることを目指すものでした。苦しみが心から生み出されるものだとすれば、苦しみをなくすには、心の働きを止めればよいということになります。
 具体的にどうするのかというと、集中力を鍛えることにより、一つのことしか意識しないようにします。そうすれば、苦しみは意識されないことになります。そして、極限まで集中力を強化すると、ついには何も認識していない状態になります。これは、気を逸らし続ける方法だと言うこともできるでしょう。
 しかし、問題は解決しませんでした。集中している間はいいのでしょうけれど、日々の暮らしの中で、24時間ずっとそうしているわけにはいかないからです。
 次に、お釈迦様は苦行を行いました。これは、カずくで心を制御する方法と言えるでしょう。超人的な我慢です。しかし、苦行によっても問題は解決しませんでした。
 お釈迦様は、苦行を止め、再び瞑想に入られました。そして、ついに苦しみから解脱することができたのでした。
 この最後に行った瞑想は、以前に行った瞑想とは違う方法でした。今度の瞑想では、意識の集中を、苦しみから背けるためでなく、苦しみを生み出している心の動きに向けたのでした。自らの心に徹底的に向き合い、観察し、ありのままに受け容れることにより、苦しみから離れることができたのです。
 まとめてみますと、お釈迦様は、気を逸らす、心を抑え込む、心を受容するという三通りの方法を試し、最後の方法で成功したことになります。
 しかし、お釈迦様は、最初の二つの方法を不要だとおっしゃっているわけではありません。心を受容するといっても、簡単にできない場合もあります。なので、実際の修行は、気を逸らす方法、我慢する方法を適宜織り交ぜながらということになります。
 お釈迦様の修行の足跡は、日々、どのように心を取り扱っていけばよいか教えてくださっているように思えます。

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