曹洞宗のお葬儀の時、仏さまの世界に入るため、十の戒め、戒をお導師さまがお授けになられます。最初の戒は「不殺生戒」命あるものを殺すことなかれ、命を大切にしなさいという教えです。この教えをお伝えできればと思います。
2年前の11月祖母が亡くなりました。数え97歳という長寿でした。今思えばお寺と幼稚園を毎日何度も往復する中、もっと声をかけていればなと、後悔ばかりです。ついつい仕事の忙しさにかまけて、せっかくお寺に行っても、あまり祖母に声をかけることなく、バタバタ仕事に没頭していたので、もっと大切な祖母と話をすれば良かったと思っています。今、自宅の居間に祖父と祖母の写真並べておいてあり、手を合わせています。
もう一つとても悲しい出来事がありました。昨年4月中旬、中学時代の友人Jさんが亡くなったよ。と携帯電話に連絡が入りました。実は前日夜、虫の知らせか、夢枕に彼女が出てきたので、携帯を取ったとき、何となく嫌な予感がしました。まだ40歳なので、同級生が亡くなるのはつらいこと。それにも増して会葬した人々の胸を打ったのは、みのりちゃん、その4月に幼稚園に入園したばかりの女の子の声でした。出棺や火葬場で、みのりちゃんは、こう言います。「おかあさんはお星さまになつちゃうの?お母さんは病気に負けちゃったの・・・?」何度も、何度もお父さんに聞いています。みんな顔を下に向け、ハンカチを目に充てています。幼い3歳になる我が子を残し、病気で亡くなった彼女は、さぞかし無念だったと思います。
こういう悲しい出来事があると、もっと話をしておけばよかったとか、生かされている、生きていることのありがたさを改めて実感させられます。お葬儀があった週には私が勤めている幼稚園のPTA総会がありました。同級生のお母さんが何人かいたため、この悲しい出来事の話をしながら、命の尊さについて少しお伝えしました。Jさんのご冥福をお祈りし、また、みのりちゃんのすこやかな成長をお祈りせずにはいられません。
わたくし達人間を含めて、すべての生物は雄と雌、男性と女性がいて、子孫を残すため、自分のDNAを残すのが何にも増して一番大切なことです。白鳥が厳しい冬をのり越えるため、遠いロシアから日本へ飛んで来て、自分の命を大切に守りぬき、また魚のサケが急流をかけ上って卵を産み付け、自分の子孫を残しています。
しかし今、日本の社会では、ものが豊かになり、若い男性も女性も結婚するのが遅くなり、40才の女性の10人に3人以上は子どもが授かっていないというデータもあります。自分の命も大切、同じように他の人の命も大切です。食べ物は、ただお腹満たすだけでなく、グルメに走ったり、ダイエットで体調を壊したり、あるいは着る服も、ただ保温だけでなく、デザイン・ブランドにこだわり、借金をして個人破産したり、快適な生活、エアコンやテレビ、テレビゲームなど快適便利な生活、生活のリズムをこわしたり、体力も落としてしまいます。
自然と触れ合うことが少なくなり、人とコミュニケーションを図ることが、まったく出来なくなったり、便利すぎる生活というのは、人の生きようという体力や、そして何よりも生きようとする気力をそいでしまいます。
97歳でこの世を去った祖母は、とてもしっかりしていて、最後の最後に病院に入院し、看護師の方にいろいろ検査をしてもらったとき、看護師が「どうして生きてるの!」と、その生きようとする気力に驚いておりました。40歳で亡くなったJさんも、きっと幼い我が子を残し、先ゆく我が身、なんと思ったことでしょう。授かった尊い命を、大切に大切に、丁寧に丁寧に1日1日を過ごしていきたいものです。
皆さまどうぞ、くれぐれも無理のないよう、畑仕事やご家族の方が楽になるよう、いつまでもお元気でお過ごしいただければと思います。ありがとうございました。
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